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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月31日 No.3539 女性と子どもを起点とした日本の変革に向けて -生活サービス委員会

神田氏

経団連の生活サービス委員会(高原豪久委員長、澤田道隆委員長、赤松憲委員長)は、新型コロナウイルス感染症等を背景とした生活や消費行動の変化を踏まえた生活サービス産業のあり方を検討している。3月8日の会合では、日本を代表するマーケッターである神田昌典アルマ・クリエイション社長が「DX不要論~日本の変革にとって、DXより大切なこと」と題して講演した。概要は次のとおり。

■ DXより大切なこと

デジタルトランスフォーメーション(DX)には、デジタル時代にふさわしい企業文化の再構築が必要である。それをせずに、諸課題の個別最適解を求める動きのなかでDXに取り組んでしまっている。DXは新しい組織文化の構築に向けた課題を解決すれば、自然と達成される。

企業が真に取り組むべき課題は何か。それは女性役員比率を2030年までに30%以上に高めることである。DXを進めるには、もともと“ヨコ”のつながりが重要である。そのため、関係性の構築という点で優れている女性が活躍できるよう、企業文化を構築することが不可欠である。

具体的には、各社において、全社横断プロジェクトによる子ども向けの商品開発の推進を提案したい。育児をしながら働く女性社員には社会的なペイン(母親業への理解不足等)がのしかかっている。全社プロジェクトを通じてその緩和に取り組むことで、ワーク・ライフ・バランスの重要性への理解が性別を問わず進み、組織文化が変わってくる。これにより、組織全体で顧客のニーズがわかり、対応するために必要なデータとその連携・分析のあり方が整理されるので、DXが進む。商品開発の成功により、担当の女性が昇進し、社内外における協力のネットワークも構築されるようになる。こうしてDXをはじめ、企業における諸課題は一気に解決していく。

■ 子どもたちの探究学習

外部との関係性のなかで、新たなビジネスモデルをつくっていくという点では、子どもたちとの関わりも検討に値する。学習指導要領の大改革で、探究学習が本格的に行われることになる。すでに、4年生の段階で、SDGsの実現に向けた会社づくり、プログラミングの活用による課題解決に向けたロボット作成などを実施している公立小学校もある。今後10年で、こうした子どもたちが各社の戦力となってくる。ビジネス界は、Society 5.0の社会に向けて準備しつつある子どもたちが期待を持ち続けられるように、今からサポートを進めるとともに、社会や自社の課題について、社員自身が理解を深めていくことも重要だろう。

■ 企業変革のカギ

企業の変革は、一人の強力なリーダーシップで実現できるものではない。「ティーチャー」(未来をみせてくれる人)、「ゴー・ゲッター」(その未来に向けて実際にやってくれる人)、「スケプティック」(リスクを確認する人)の3タイプが「モビライザー」(企業を変革できる人)となり、力を合わせていくものとされている。こうした共創の主役となるのは、「女性」と「子ども」であると確信している。変革のカギは、従来の男性的な経営マネジメントに終止符を打ち、リモートワークによってつながり始めた家庭にみられる「柔らかなリーダーシップ」のカルチャーを企業でも浸透させることである。生活サービス委員会は、生活者に一番近く、日本の企業文化を変えていくうえで非常に影響力のあるポジションにあるのではないかと期待している。

【産業政策本部】

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