1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2022年6月16日 No.3548
  5. 重要労働判例説明会を開催

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年6月16日 No.3548 重要労働判例説明会を開催

藤田氏

経団連は5月26日、重要労働判例説明会をオンラインで開催した。藤田進太郎弁護士(四谷麹町法律事務所)が「東リ事件・大阪高裁判決」を解説した。概要は次のとおり。

■ 事件の概要

本件は、ライフ・イズ・アート(ライフ社)の元従業員5名が、ライフ社と業務請負契約を結んでいた東リに対し、同業務請負契約は偽装請負等の状態にあったとして、労働契約申込みみなし制度(注)の適用により、東リとの間に労働契約が存在することの確認等を求めた事案である。一審神戸地裁は、偽装請負等の状態にあったことを否定したが、大阪高裁は、偽装請負等の状態にあったことおよび偽装請負等の目的があったことを肯定し、労働契約申込みみなし制度の適用を認めた。

■ 判決のポイント

(1)偽装請負等の状態にあったか

大阪高裁は、厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(区分基準)を「参照」した。そのうえで、(1)東リの従業員がライフ社の責任者に対し具体的な作業手順を指示していた(2)ライフ社の社長は自社の従業員の労働実態を把握しておらず、労働時間に関する具体的な指導も行っていなかった(3)ライフ社の社長に自社の従業員が起こした事故が伝えられたり、ライフ社が服務規律に関する指示を行ったりしておらず、有給休暇を取得する場合の応援者の手配は東リの従業員に連絡することにより行われていた(4)ライフ社が原材料費を負担しているということはできず、東リから現場事務所を無償で、製造ラインを月額2万円で貸与されており、その修理費も負担していなかった(5)不良品等が発生した際に東リからライフ社へ法的責任の履行を求めたことはなかった(6)ライフ社に業務に必要な社員教育を行う能力はなかった――などとして、区分基準における請負の要件を満たしておらず、偽装請負等の状態にあったと判断した。

(2)偽装請負等の目的があったか

大阪高裁は、日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、偽装請負等の目的があったと推認されるとの規範を定立した。そのうえで、平成11年ごろ、偽装請負の状態にあったことは明らかであり、平成22年ごろまでは従業員の混在があり、混在がなくなった後も偽装請負等の状態を解消していなかったなどとして、東リには偽装請負等の目的があったと推認した。

■ 実務上の留意点

企業においては、偽装請負等の状態にあったと評価されないようにすることが最も重要である。そのためには、(1)区分基準の各項目だけではなく「全体」として注文主による指揮命令がないか考える(2)形式だけではなく「実態」として注文主による指揮命令がないか考える(3)「ギリギリセーフ」を目指さない(4)法律の遵守と業務効率の向上を二者択一と考えない――ことが重要である。

(注)派遣先が偽装請負等特定の違法派遣を受け入れた場合、その時点で派遣先が派遣労働者に対し、派遣元事業者における労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだものとみなされる制度

【労働法制本部】

「2022年6月16日 No.3548」一覧はこちら