Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年7月7日 No.3551  「IT公共調達改革の在り方」に関する説明会を開催

経団連が今年4月12日に公表した「Society 5.0の扉を開く~デジタル臨時行政調査会に対する提言」では、新たな技術に対応した制度整備の一環として、地方公共団体における公共調達手続きのデジタル完結等を要望している。折しも英国をはじめ各国では、デジタル公共調達の仕組みである「デジタルマーケットプレース」(DMP)の導入が進みつつある。DMPは経団連の要望にも合致することから、世界の公共調達をめぐる最新の状況を把握することが重要である。

そこで、経団連は6月7日、「IT公共調達改革の在り方」に関する説明会をオンラインで開催した。世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターの隅屋輝佳アジャイルガバナンス プロジェクトスペシャリストから、DMP等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 現在のIT公共調達をめぐる課題

情報システムの調達に際しては、原則、一般競争入札(入札により落札者を決定)が適用される。一般競争入札は経済性や競争性、透明性の確保が容易である半面、品質の確保が難しいというデメリットがある。発注者(行政)が受注者(企業)を選定する際には、仕様書作成に十分な知識と能力を有する人材が必要となる。一方、受注者側に行政機関での受注実績がないと相手にされず、質の高い提案をしても価格勝負で選定されないなど、公共調達市場への参入障壁となっている。迅速性・競争性を担保しつつ、いかに質を確保していくかが課題である。

■ DMPの利点

この点、DMPは既存の調達制度とは異なり、複数のベンダーやサービスを一律の要件で登録するため、行政機関は入札実績に関係なく、登録済みのサービスや企業を簡易的に調達できる。複数ベンダーを一括登録する契約であるフレームワーク・アグリーメント(FA)は、いわば入札資格に相当する。企業がFAに登録した後、DMPを通じてマッチングした行政機関と個別契約を結ぶこととなる。

DMPのメリットとして、(1)発注者が受注候補事業者をリスト化する必要がないため、事業者リストの質量が担当者に依存しないこと(2)調達担当機関(デジタル庁)が基準を定めるため、安心して受注先を選べること(3)受注側も一度の契約で全行政機関へのアクセス・営業チャネルを獲得できること(4)複数条件で比較できるため、価格以外の基準を考慮しやすいこと(5)いったん登録すれば入札不要となり、最短2週間で受注事業者が選定されること(英国の場合)――等が挙げられる。

■ わが国におけるDMP導入に向けて

すでに英国や米国、ブラジル、インドでは、DMPないしはDMPに相当するIT公共調達の仕組みが導入されている。各国の先行的な取り組みも踏まえ、日本でのDMP導入に際しては、(1)調達ルールの見直し(2)会計法令や国際ルールとの整合性(3)運用主体・運用ルールの整備(4)利用する行政機関の範囲(例=国のみならず地方公共団体も活用可能に)――といった検討事項を精査し、実証実験等を通じて段階的に導入していくことが重要である。

【産業技術本部】