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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年9月1日 No.3557 2022年度防衛産業委員会総会を開催 -わが国の安全保障環境をめぐる課題/廣瀬慶應義塾大学教授が講演

廣瀬氏

経団連は7月25日、東京・大手町の経団連会館で防衛産業委員会(泉澤清次委員長)の2022年度総会を開催した。2021年度活動報告・収支決算および2022年度活動計画・収支予算を報告し、役員改選案を審議・承認した。

慶應義塾大学総合政策学部の廣瀬陽子教授が、わが国の安全保障環境をめぐる課題について講演するとともに意見交換した。講演の概要は次のとおり。

■ ロシアのハイブリッド戦争

ハイブリッド戦争とは、政治的目的を達成するために、軍事的脅迫とそれ以外のさまざまな手段、つまり非正規戦と正規戦の手法を組み合わせたものをいう。政治、経済、外交、サイバー攻撃、プロパガンダを含む情報・心理戦などのツールのほか、テロや犯罪行為も組み合わされる。

現在のロシアとウクライナの戦争は、14年のウクライナ危機から始まったと考えている。ロシアは同年3月にウクライナ南部のクリミア半島を併合し、続いてウクライナ東部で反ウクライナ・親ロシア派による戦闘を支援した。当時からサイバー攻撃や情報戦が続き、22年2月にロシアの正規軍がウクライナに攻め込んだことで、現在は完全なハイブリッド戦争が行われている。

ロシアにおいて、ハイブリッド戦争は国家戦略として位置付けられている。ロシアの新軍事ドクトリン(基本原則)は13年7月に草案が作成され、14年12月にプーチン大統領が署名したものであり、現代の軍事紛争の特徴としてハイブリッド戦争のことが記されている。

ハイブリッド戦争の担い手は多様である。特殊任務部隊、民間軍事会社、インテリジェンス、ハッカー、トロール部隊、政治技術者(目的の地域に入り込み、政治工作を行う者)などが役割を果たしている。

ロシアによるハイブリッド戦争の主軸は、サイバー攻撃と情報戦・宣伝戦により、実戦を避けつつ、相手に打撃を与えることである。サイバー攻撃は国家支援型の性格が強く、GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)やSVR(連邦対外情報庁)、FSB(連邦保安庁)などが行っている。心理戦も効果的に展開しており、フェイクニュースをSNSなどで拡散している。

ロシアの軍事予算額は世界5位であるが、米国の8%強にすぎず、軍事の展開は一点豪華主義的である。高性能最新ミサイル防衛システムを保有し、ウクライナとの戦闘では極超音速兵器ミサイルを使用している。また、高レベルの核搭載兵器の開発にも注力してきた。

現在、ロシアが苦戦する一方、ウクライナはハイブリッド戦争を見事に展開している。政府や国民がSNSなどで情報発信するなど情報戦や認知戦に成功し、海外からの支援にも支えられている。類例を見ない国際協調の流れから、新しい国際秩序ができるという見方もある。

■ 日本にとっての脅威と対抗策

ロシアにとって、日本はハイブリッド戦争の対象になっており、すでにサイバー攻撃が行われている。ハイブリッド戦争を理解して対策を講じることが、日本の安全保障政策において不可欠である。

サイバー攻撃に対しては、専守防衛にこだわらず、ホワイトハッカーなどで攻撃的立場を取るなど、多面的に対応する必要がある。

日本は情報リテラシーが低く、偽情報に振り回される可能性がある。人材育成やメディアリテラシーの向上などが求められる。

国際協調も必要である。日米同盟はすでにサイバー領域もカバーしており、NATO(北大西洋条約機構)やアジア諸国との協力も肝要である。

【産業技術本部】

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