Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年9月1日 No.3557  最近の労働行政をめぐり小林厚生労働審議官と懇談 -労働法規委員会

小林氏

経団連は7月26日、労働法規委員会(冨田哲郎委員長、小路明善委員長、芳井敬一委員長)をオンラインで開催した。厚生労働省の小林洋司厚生労働審議官が「労働行政の動向」と題して講演。その後、委員との間で意見交換した。概要は次のとおり。

■ 裁量労働制の見直し

企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大については、2018年に成立した働き方改革関連法に盛り込まれる予定であった。しかし、議論の前提となる実態調査のデータに信頼性等にかかわる問題が生じたため、法案から外れた。これを踏まえ、厚労省は、新たに裁量労働制の実態を調査するとともに、「これからの労働時間制度に関する検討会」で同調査の結果等を踏まえて検討し、22年7月15日に報告書を公表した。

同報告書は、裁量労働制の対象業務について、まずは現行制度のもとで制度の趣旨に沿った対応が可能かを検討し、それが難しい場合は、経済社会や労使のニーズの変化等も踏まえて必要に応じて検討すべきとの考えを示した。また、労働者が理解・納得したうえでの制度の適用が重要となるため、専門業務型・企画業務型いずれについても制度概要等を説明したうえで本人の同意を得ること等が適当としている。今後は、同報告書も踏まえながら、裁量労働制の対象業務等について労働政策審議会で議論することとなる。

また、同報告書は、裁量労働制に限らず、シンプルでわかりやすい制度にしていくこと等、労働時間法制についての今後の課題や視点もまとめている。これらについても、労働政策審議会において論点になると考える。

■ 男女間賃金差異の開示

日本の男女間賃金格差は縮小傾向だが、諸外国と比較すると依然として大きい。これを解消するため、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」に、男女間の賃金差異の開示義務化が盛り込まれ、7月8日、女性活躍推進法の改正省令が施行された。常用労働者301人以上の企業は、改正省令の施行後に終了した事業年度の男女間賃金差異を、当該事業年度の翌事業年度から(例えば決算期が3月の場合、23年3月期分を23年4月以降)、正規雇用労働者、非正規雇用労働者、全労働者の三つの区分ごとに開示する必要がある。厚労省は、説明欄を活用し、男女間賃金格差の背景事情等を任意で公表することを推奨している。

■ 働き方改革フェーズⅡ

経団連が推進する「働き方改革フェーズⅡ」に同感する。エンゲージメントを高める施策に注力することが必要であり、特に、自律的な働き方の実現に向けた取り組みが重要となる。企業のなかを変えることが社会を変える一番の推進力になるため、引き続き理解と協力をお願いしたい。

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意見交換では、多数の委員から、自律的な働き方を推進する観点から、裁量労働制の対象業務を拡大すべきとの意見が出された。これに対し、小林氏は、「期待が大きいことを十分承った。労使双方にとって意味のあるものとなるよう、建設的な議論を進めていきたい」と応じた。

【労働法制本部】