Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年9月22日 No.3560  提言「自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けて」を公表

経団連(十倉雅和会長)は9月13日、「自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けて~貿易投資分野における日本の役割と戦略」を公表した(図表参照)。自由な貿易投資の維持・推進に向け、世界が目指すべき方向性と、2023年G7広島サミットを主催する日本の果たすべき役割ならびに具体的な戦略について提言した。概要は次のとおり。

提言の主なポイント

■ 現状認識

第2次世界大戦後、世界は、自由で開かれた国際経済秩序のもと、貿易投資を推進することで繁栄を享受してきた。しかし、ここ数年、二大経済大国が戦略的競争関係に入り、20年には、新型コロナウイルスの感染が拡大した。加えて、ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序を揺るがす事態は、世界の分断への懸念をさらに強めている。このような現状を放置すれば、第2次世界大戦前と同様のブロック化さえ懸念される。実際、世界がブロック化され、国際分業や技術伝播が滞ると、長期的に世界のGDPの5%、すなわち日本経済の規模に匹敵する生産額が失われるとのWTOによる試算もある。これが、自由で開かれた国際経済秩序の再構築が急がれるゆえんである。

■ 世界が目指すべき方向性

自由で開かれた国際経済秩序を実現させるうえでは、まず、自由な貿易投資の維持・推進が求められる。世界経済あるいは地域経済への統合を志向する国は中小国を中心に少なくない。また、その際は、安全保障、持続可能性、経済のデジタル化など時代の要請にも応えていく必要がある。

特に、安全保障の確保については、その観点から貿易や投資を制限する場合であっても、対象を真に必要な最小限度に絞る必要がある。すなわちネガティブリスト・アプローチを採用することが、企業の事業活動の予見可能性を高め、自由な貿易投資活動を推進することにつながる。

■ 日本の果たす役割と戦略

23年は日本がG7議長国となり、同年5月に広島でサミットが開催される。このような立場にある日本としては、途上国を含めた世界全体を包摂する自由な貿易投資の維持・推進、安全保障の確保と自由な貿易投資との両立といった課題への対応にイニシアティブを発揮すべきである。

そのうえで、日本が採るべき戦略は四つある。第1に、G7参加国・地域を中核としたハイレベルな貿易投資枠組み「自由貿易投資クラブ」の立ち上げをG7広島サミットに向けて提唱すべきである。第2に、日本にとって有益な国際環境の形成や経済利益の確保に資する国・地域をあらためて選定し、EPAや投資協定のネットワークをさらに拡大・深化すべきである。第3に、これに関連して、EPA・投資協定の相手国・地域の選定にあたり、エネルギー・食料の安定供給の確保に留意すべきである。特に、メルコスール(南米南部共同市場)とのEPA、GCC(湾岸協力会議)諸国とのFTA締結が重要である。第4に、信頼ある自由なデータ流通(DFFT)にかかるルールの確立に向け、WTOで議論を進めるのはもとより、ASEAN主要国やインドも参加するインド太平洋経済枠組み(IPEF)を活用すべきである。

【国際経済本部】