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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年10月20日 No.3563 激化する国際競争とわが国バイオ産業の競争力強化に向けて -バイオエコノミー委員会企画部会

経団連は10月4日、バイオエコノミー委員会企画部会(藤原尚也部会長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。経済産業省の下田裕和生物化学産業課長から、激化する国際競争の現状とわが国バイオ産業の競争力強化に向けた施策について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ バイオものづくり~微生物が開く新たな産業革命

現在、微生物を利用してCO2から化学品原料やタンパク質等の物質を生産する取り組みに関心が集まっている。この技術の開発には大変な困難が伴うが、実現すれば企業から排出されるCO2の量を削減することが可能となるため、社会に大きなインパクトを与えることになる。バイオものづくりは製造プロセスのイノベーションであり、社会課題の解決と経済成長との二兎を追うことを可能とする。

もっとも、バイオテクノロジーがいかに素晴らしい技術であっても、各産業の既存製造プロセスに課題がなければ代替する必要がない。そのため各産業において、バイオテクノロジーによって、(1)世の中を変えていくニーズがどこにあるのか(2)いかなる課題を解決していくのか――を考えることが重要である。つまり、バイオエコノミーの形成には業界単位で取り組むことが必要ということである。経産省では、業界全体としてバイオエコノミーへかじを切る覚悟を決める産業分野はどこか、その産業分野ではどのような循環社会を描いているのかといった調査を進めている。また、技術開発も重要ではあるが、標準化や品質表示ルールの仕組みづくりなどに関しても官民が一体となって取り組むべきである。

■ 医薬品サプライチェーンの強靱化と創薬ベンチャーエコシステムの確立に向けて

日本はワクチンの国内開発に出遅れたため、国内で接種するワクチンの全量を輸入に依存せざるを得なかった。また、各国政府がワクチン等を確保するために続々と輸出制限措置を発動したことから、海外からの調達、接種の開始時期が主要国より大きく遅れてしまった。

現状では、創薬ベンチャーが開発品目数の8割を占めるなど、その中心的な担い手となっている。しかし、ライフサイエンス分野のスタートアップエコシステムに関する世界の都市ランキングで、日本の都市はランキング外である。また、日本における創薬ベンチャーの資金調達額は諸外国と比べても極めて小さい。そこで、2021年6月1日に閣議決定したワクチン開発・生産体制強化戦略に基づき、令和3年度補正予算に、ワクチン製造拠点の整備(2274億円)と創薬ベンチャーの育成(500億円)を中心に総額約2800億円を盛り込むなど取り組みを進めている。制度が呼び水となって、海外のベンチャーキャピタルにより多くの投資を促すことで、スタートアップには積極的に海外展開して成功を収めてほしい。

【産業技術本部】

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