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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年1月1日 No.3573 医療データ利活用に向けた内閣府の取り組み -イノベーション委員会ヘルステック戦略検討会

経団連は11月29日、イノベーション委員会ヘルステック戦略検討会をオンラインで開催した。内閣府規制改革推進室の木尾修文参事官から、規制改革推進会議における医療データに関する取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 医療データ利活用の重要性

今後、少子高齢化の進行により人口構造が変化し、ますます医療・介護ニーズが増大すると想定される。一方で、医療・介護人材の十分な確保が困難になると予想される。特に地方では、過疎化の進展に伴い医療・介護サービスの提供に関する深刻な問題に直面するおそれがある。そのため、日本中で適切な診療やケアを実現するには、医療データの関係者間における効率的な共有がカギとなる。

また、医療データの利活用は、患者本人が受ける医療・介護サービスの質を向上させるだけでなく、医療データを用いた研究開発を通じて国民の健康増進や公衆衛生の向上、医療財政の健全化などにも貢献するといえる。医療データの利活用は社会全体の福祉の向上のために重要である。

■ これまでの議論

2022年度、規制改革推進会議のもとで複数回ワーキング・グループを開催し、医療データ利活用について関係者と議論を重ねてきている。

まず、医療データの一次利用については、個人情報保護法により要求される同意取得にかかる負担が一因となって、地域の医療機関や介護施設等において、患者の適切な診療・ケアに必要な医療データの共有が必ずしも円滑に進んでいないという指摘があった。そのうえで、医療データの取得や第三者提供にあたっては、EUや米国と同様に、利用の目的・共有先・データ内容の限定や共有先における適切な安全管理などを行うことを前提としつつ、必ずしも、個人の同意なくして本人の権利・利益の適切な保護を図るという選択肢の可能性等について、個人の権利・利益の保護が適切に行われるかといった観点などから議論を行っている。

次に、二次利用については、医療データの第三者提供に関する本人からの同意の取得に要する手間・コストが一因となって、研究・開発等に利用可能な医療データが諸外国より少ないということが指摘された。この論点については、米国ではHIPAA (Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996) Privacy Ruleが存在し、また、EUではEHDS (European Health Data Space) 規則案という法案が提出されていることも踏まえ、医療データの利用目的を限定しつつ、二次利用者によるデータの選別的な利用を防止し、かつ、仮名加工データの転々流通を防止するといった制度を整備することにより、一次利用と同じく、必ずしも、個人の同意なくしても本人の権利・利益の適切な保護を図るという選択肢等について議論を行っている。

また、今後本人の適切な保護のためにどのような権利が与えられることが適切かという点についても、継続して議論していく予定である。

■ 今後の主な論点

以上の点に加え、欧州で議論が進んでいるEHDS規則案のような医療関連データの利用や共有などを安全かつ有益に行うための制度を導入すると想定した場合において、欧州と同様に、電子カルテや介護ソフトなどの一定のベンダー等に対し、一定の標準規格への準拠をどのように確保するのかという点についての検討も必要になる。これらすべての論点について、引き続き、丁寧に議論していきたい。

【産業技術本部】

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