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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年1月12日 No.3574 スタートアップ・大学を中心とする知財エコシステムの強化 -スタートアップ委員会

田中氏

南場委員長

出雲委員長

経団連は12月9日、スタートアップ委員会(南場智子委員長、髙橋誠委員長、出雲充委員長)をオンラインで開催した。内閣府知的財産戦略推進事務局の田中茂明事務局長から、スタートアップ振興に欠かせない知的財産(知財)エコシステムの強化に向けた政策の検討状況について説明を聴いた。田中事務局長の説明概要は次のとおり。

■ 大学知財マネジメントが目指すべき姿

2022年の政府の知的財産推進計画では、スタートアップ・大学の知財エコシステムの強化を一丁目一番地に掲げている。さまざまな課題があり、まずは大学周辺の課題から対応すべく具体化を検討している。この取り組みは政府のスタートアップ育成5か年計画にも位置付けられ、また、国際卓越研究大学制度、地域中核・特色ある研究大学振興政策等の大学改革の観点からも重要なテーマである。

大学の現状を聴くと、学内で知財関連経費が不足し、共同研究先と対等な交渉を行えずに社会実装に向けた権利が弱くなり、研究成果の死蔵化も相対的に増える負の連鎖のなかにある。

脱却するには、社会実装機会の最大化という大学のミッションに適合した知財ガバナンスの再構築が必要である。知財予算を先行投資し、社会実装機会の最大化に必要な権利の獲得、スタートアップへのライセンスにつなげていく必要がある。

■ 大学知財マネジメントの課題

大学の保有特許の利用率は東京大学・京都大学でも3分の1、それ以外は2割前後である。大学保有特許のうち、6割が企業等との共有特許であるが、大学による共有特許のスタートアップへのライセンスには、特許法のデフォルト規定によれば共同研究先企業の同意が必要となる。現場では、共同研究先から同意が得られず、大学がライセンスできず、スタートアップの起業断念、意図した事業計画の断念に至る事案が出ている。これに対し、社会実装責務を果たすため、東大等では、共同研究先が所定期間内に正当な理由なく共有特許の実施をしない場合には、大学がスタートアップ等にライセンスする内容の共同研究契約ひな型を示しており、重要な参照事例と認識している。

ほかにも、国際特許出願対応、株式・新株予約権も活用した合理的なライセンス対価の受け取り方法の設計、大学の特許の質の確保のための出願・権利化のフェーズ管理といった課題を検討している。

■ ガバナンスガイドラインの策定

これらの点について、大学知財ガバナンス検討会で議論を深め、23年3月をめどに、内閣府、文部科学省、経済産業省の3者による「大学知財ガバナンスガイドライン」を策定する。社会実装機会の最大化というミッションが果たされるよう、大学改革関連施策と連携したい。経団連には、企業経営者と現場レベルの間で日本社会全体のイノベーション力強化に必要な改革であるとの認識が共有されるような取り組みをお願いしたい。

【産業技術本部】

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