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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年1月19日 No.3575 COP27の成果と今後の動向 -南 資源エネルギー庁首席国際カーボンニュートラル政策統括調整官から聴く/環境委員会

南氏

経団連の環境委員会(小堀秀毅委員長、野田由美子委員長)は12月15日、オンラインで会合を開催した。資源エネルギー庁の南亮首席国際カーボンニュートラル政策統括調整官から、11月6~20日にかけてエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)の成果と今後の動向について、説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ COP27の結果概要

COP27には、バイデン米大統領、マクロン仏大統領ら、世界約100カ国の首脳が参加するなど、COPの政治的な重要性が高まってきている。日本からは、西村明宏環境大臣が参加した。

COP27の主な結果として、(1)パリ協定の1.5℃目標(世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ1.5℃に抑える目標)の重要性の再確認(2)パリ協定の気温目標に整合的な2030年の国別目標(NDC)の強化(3)気候変動の悪影響に伴う「ロス&ダメージ」に関する基金の設置等――が決まった。

ロス&ダメージの基金については、気候変動の影響に特に脆弱な国に対し、資金面での支援を新たに講じることが決定された。しかし、どの国が、どの程度の資金を拠出し、どういった国を支援するかといった具体的な内容は現時点で未定である。23年のCOP28での決定に向けて議論が進められる見通しである。また、各国の温室効果ガス削減(「緩和」)の取り組みをチェックするメカニズムとして、「緩和作業計画」も採択された。

こうした政府間の交渉以外では、特定の有志国や民間企業が参加する「イニシアティブ」が多数形成された。日本も、災害対策への技術的支援等を提供する「ロス&ダメージ支援パッケージ」や、JCM(二国間クレジット制度)の促進につながる「パリ協定6条実施パートナーシップ」といったイニシアティブを立ち上げた。

■ 日本の発信

COP27では、JCMや適応(気候変動影響への対応)など、気候変動問題に関する日本の具体的な貢献策を発信し、メディアからも非常に高い関心が寄せられた。

特に力を入れたのは、「削減貢献度」(Avoided Emissions)というコンセプトの発信である。これは、製品の製造段階における排出量だけに着目するのではなく、グリーンな製品(例=高効率エアコン、低排出自動車、発泡断熱材等)の普及を通じた社会全体のCO2削減への貢献についても評価するという、新たな価値軸を構築するものである。こうした価値を生み出す企業へ資金を呼び込むことで、経済成長とカーボンニュートラルの実現が後押しされると考える。

■ 今後の動向

ロス&ダメージの基金の設置に象徴されるように、先進国と途上国との間で利害の分断が進んでいる。また、各国の政府・企業は、知恵を絞りながら、気候変動問題を自らの利益につなげていくことを考えている。

日本を含む先進国は、NDCの達成に最大限取り組んでいくことはもとより、国境を超えた排出削減にも貢献していくことが求められる。経済産業省としては、(1)気候変動問題へのビジネス・ソリューションの提供(2)グローバルな市場創出とイノベーション協力(3)アジアの現実的なグリーントランスフォーメーション(GX)実現(「アジア・ゼロエミッション共同体」構想の実現等)――を進めていく。

◇◇◇

説明後、右田彰雄環境委員会地球環境部会長が、COP27における経団連の活動(12月15日号既報)について報告した。

【環境エネルギー本部】

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