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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年1月26日 No.3576 経団連フォーラム21・経団連グリーンフォーラム拡大講座 -魚谷審議員会副議長、筆保横浜国立大学教授が講演

経団連事業サービス(十倉雅和会長)は12月21日、東京・大手町の経団連会館で、次代を担う経営リーダー育成を目的とする年間講座「経団連フォーラム21」と、ミドルマネージャー対象の年間講座「経団連グリーンフォーラム」との合同による拡大講座を開催した。魚谷雅彦経団連審議員会副議長・資生堂社長(現会長)、横浜国立大学先端科学高等研究院台風科学技術研究センター長の筆保弘徳教授が、それぞれ講演した。両フォーラムの今期メンバーとそれぞれの修了生ら、オンラインを含め約150人が参加した。

■ 世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指して(魚谷氏)

魚谷副議長

2014年に資生堂社長に就任し、同社を真のグローバルカンパニーにして、100年先も輝き続ける基盤をつくることを目標に掲げた。国内外の現場で延べ8万人の社員と対話し、日ごろの困りごとにひそむ経営戦略上の課題を見いだすとともに、会社を良くしたいという社員の思いを共有した。

中長期戦略「VISION2020」では、15年度からの3年間を「事業基盤の再構築」、続く18年度からの3年間を「成長加速の新戦略」のフェーズと位置付けた。マーケティング、イノベーション、人と組織といった3領域への投資の強化、マトリクス型グローバル経営体制の構築など、さまざまな改革を実行することで、売り上げや営業利益の目標を前倒しで達成した。20年には新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて厳しい経営環境となったが、その後も雇用は守り、選択と集中によるグローバルな構造改革に取り組んでいる。

「PEOPLE FIRST」の経営理念のもと、「人」への投資、すなわち「価値創造の源泉である社員を信頼してエンパワーメントすること」を大切にしている。また、「Be Just and Fear Not.(正しくあれ、恐れるなかれ)」という言葉を信じ、会社や社員にとって正義であれば、勇気を持って決断するようにしている。

■ 台風列島日本のこれまでと未来(筆保氏)

統計開始以降、最も多くの死者・行方不明者(5098人)を出した1959年の伊勢湾台風を受けて、国は台風対策に本腰を入れるようになった。その後、人的被害は少なくなったが、近年は強い勢力を保ったまま上陸する頻度が高くなり、経済的被害はむしろ大きくなっている。

われわれは、コンピューター上で、気圧も進路も伊勢湾台風と同じ「クローン」を動かしながら、地形や経路ごとに被害状況のシミュレーションを積み重ねてきた。その結果、地域や市区町村単位の被害予測を出せるようになり、今では経済的被害の見積もりも可能となっている。

台風は今や脅威であり、このまま何もしなければ2050年の日本は災害大国になってしまう。しかし、技術イノベーションにより、台風がもたらす「恵み」で、日本をエネルギー大国にすることもできる。これを実現するのが「タイフーンショット計画」である。具体的には、(1)台風の勢力を抑える人工制御技術(2)無人船舶等による台風発電技術――の開発である。前者は、国の「ムーンショット型研究開発制度」の研究開発プロジェクトに選定された。現在のインフラだけで台風が上陸しても被害は出ないという未来を目指すものである。まだどのような制御の方法があるか模索中であるが、一例としては、台風の勢力そのものとなる中心の暖気核に無人航空機で接近して、氷などを散布して冷やす方法などが挙げられる。また後者は、台風の莫大なエネルギーを「恵み」に変える計画であり、産学官連携で協力してぜひとも実現させたいと考えている。

◇◇◇

講座に先立ち、「経団連フォーラム21」21年度生による優秀修了レポート5件を表彰した。また、講演後の交流会では、両フォーラムのメンバーが懇親を深めた。23年3月の修了式に向けて、引き続き研鑽を積む。

【経団連事業サービス】

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