1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年2月16日 No.3579
  5. 企業開示制度改正ならびに内部統制基準等改訂の動向

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年2月16日 No.3579 企業開示制度改正ならびに内部統制基準等改訂の動向 -金融・資本市場委員会企業会計部会

経団連は1月25日、金融・資本市場委員会企業会計部会(佐々木啓吾部会長)を開催した。金融庁企画市場局の廣川斉企業開示課長と齊藤貴文開示業務室長から、(1)四半期開示の見直し(2)「企業内容等の開示に関する内閣府令」(開示府令)等の改正(3)内部統制基準等の改訂について、説明を聴くとともに意見交換した。両氏による説明の概要は次のとおり。

■ 四半期開示の見直し(廣川氏)

2022年12月に、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)の報告書を取りまとめ、金融商品取引法の第1・第3四半期報告書の廃止(取引所規則に基づく四半期決算短信への一本化)について、制度的な対応の方向を提示した。概要は次のとおり。

  1. (1) 当面は、四半期決算短信を一律に義務付ける一方、適時開示の充実の状況等をみながら、任意化について継続的に検討する。
  2. (2) 開示内容は、現行の四半期決算短信の開示事項をベースに、投資家からの要望が特に強い情報を追加する。
  3. (3) 監査人によるレビューについては任意とするが、会計不正等が起こった場合には一定期間義務付ける。
  4. (4) 虚偽記載に対しては、取引所からのエンフォースメント(取引所規則に基づく制裁措置)をより適切に実施する。ただし、意図的で悪質な虚偽記載については、罰則の対象になり得る。
  5. (5) 半期報告書について、上場企業は、現行の第2四半期報告書と同程度の記載内容と監査人のレビューを求める。その提出期限は、決算後45日以内として、非上場企業も上場企業と同じ枠組みを選択可能にする。

このほか、半期報告書および臨時報告書の金融商品取引法上の公衆縦覧期間を5年間へ延長することなども提言した。今通常国会に、金融商品取引法の改正法案を提出する予定である。法案が成立すれば、24年4月からの適用を検討している。

■ 開示府令等の改正(廣川氏)

22年6月のDWG報告を踏まえ、(1)サステナビリティ情報の「記載欄」の新設(2)「人材育成方針」「社内環境整備方針」の「記載欄」での開示(3)「男女間賃金格差」「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」の開示――等を内容とする、「開示府令案」を22年11月に公表し、パブリック・コメントを募集した。同案に対しては、多くのコメントが寄せられた。

例えば、サステナビリティ情報の開示について、連結ベースの指標・目標の開示を要求していることへの懸念が寄せられた。これに関して、すべての連結対象企業ではなく、連結グループのうち主要な事業を営む会社において具体的な取り組みが行われている場合等には、必ずしもすべての子会社を含めた指標・目標を開示するのではなく、企業の取り組みの実態に応じて開示することが考えられる。

近々、パブリック・コメントの結果と開示府令等の最終版を公表する。3月期決算企業には、23年3月期の有価証券報告書からの適用を求めており、「記述情報の開示の好事例集」も参考に、対応を検討してほしい。

■ 内部統制基準等の改訂(齊藤氏)

金融商品取引法に基づく内部統制報告制度が導入されてから、14年が経過した。この間、経営者による内部統制の評価範囲の外で、開示すべき重要な不備が明らかになる事例が見受けられること等を踏まえ、22年12月に、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」の改訂案を公表した。

改訂案では、例えば、経営者が、内部統制の評価対象とする重要な事業拠点等を選定する指標である「売上高等の概ね3分の2」や「売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定」について、参考情報として残している。一方、機械的に適用すべきでないことから、内部統制の評価対象については、企業のリスク評価に基づいて実態に応じた判断を行うべきである旨を明確にした。

改訂案は、企業の内部統制を後押しする観点で、気づきを示すこと等を目的としており、実務の参考にしてほしい。

【経済基盤本部】

「2023年2月16日 No.3579」一覧はこちら