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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年2月23日 No.3580 OECD多国籍企業行動指針改訂の動向に関する懇談会を開催 -OECD諮問委員会多国籍企業行動指針改訂検討タスクフォース

ウィナンド氏

ローゼンバウム氏

経団連のOECD諮問委員会多国籍企業行動指針改訂検討タスクフォース(佐久間総一郎座長)は1月27日、経済協力開発機構(OECD)の公的諮問機関であるBusiness at OECD(BIAC、経済産業諮問委員会)とオンライン会議を開催した。ウィナンドL. E. クエードヴリグBIAC投資と責任ある企業行動委員長、ハンニ・ローゼンバウム事務局長から、OECD多国籍企業行動指針(指針)改訂の動向に関して説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ OECD多国籍企業行動指針の概要

1976年に策定された指針は、指針に参加する51カ国(OECD加盟国38カ国+非加盟国13カ国)の多国籍企業に対して、企業として期待される責任ある行動を自主的にとるよう非拘束的に勧告するものである。企業行動に関する最も包摂的な文書として、各国政府が支持している。指針は、責任ある企業行動に関し、情報開示、人権、雇用および労使関係、環境、贈賄・贈賄要求・金品の強要の防止、消費者利益、科学および技術、競争、納税等、幅広い分野において原則と基準を定めている。指針の普及、照会処理、問題解決支援のため、各国が連絡窓口(NCP=National Contact Point)を設置していることも特徴である。また、2018年には、デュー・ディリジェンスを実施するための推奨事項を列挙し、共通理解を促進するためのガイダンスを策定している。ただし、同ガイダンスはすべての状況に適用されるわけではないことに留意する必要がある。

■ 現改訂案の懸念事項

指針は、基本的に10年ごとに見直されている。約2年前、現指針のアップデートの検討プロセス(現状評価)が開始された。現状評価では、非政府組織や労働組合から非常に強い働きかけがあり、現改訂案にもそれが強く反映されている。OECDにより2月10日まで、現改訂案に対するパブリック・コンサルテーション(注)を実施している。BIACや多くの加盟団体の主な懸念は以下のとおりである。

第1に、デュー・ディリジェンスの対象が、バリューチェーン下流に拡大されたことで、企業側が実務上対応できなくなっていること。第2に、改訂案では、600ページに及ぶ広範なガイダンスへの言及があり、企業が参照するよう推奨されているにすぎないガイダンスが、指針と同等の効力を有すると解釈されるおそれがあること。第3に、デュー・ディリジェンスの対象が、環境章、科学および技術章にも拡大されていること。環境章では気候変動や温室効果ガス排出量に触れるとともに、科学および技術章では広範なデジタル技術に言及している。第4に、定義が不明確で曖昧な概念や期待が散見されること。最後に、OECD投資委員会と責任ある企業行動に関する作業部会が保持すべき指針の解釈権限と監督が、OECD事務局の所与のものとされていることである。

BIACは再三再四、前述の懸念を表明してきたが、いくつかの重大な懸念は、依然として解決できていない。また、指針は、現在議論中の欧州連合(EU)企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令案や国際投資協定に取り込まれており、事実上の法的拘束力を有するようになっている。EUをはじめ日本国外で活動する経団連会員企業にも大きく影響する。

3月には、責任ある企業行動に関する作業部会で最終協議を行う。その後、改訂された指針は、6月初旬のOECD閣僚理事会で採択される予定である。その影響力の大きさ、重要性に鑑み、経団連と緊密に連携して対応したい。

(注)企業・業界団体・市民など、あらゆる国のあらゆる利害関係者の意見を聴くこと

【国際経済本部】

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