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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月9日 No.3582 「2023消費者志向経営トップセミナー」を開催

経団連は2月7日、東京・大手町の経団連会館で、消費者関連専門家会議(ACAP)、消費者庁との共催により、「2023消費者志向経営トップセミナー」を開催した。消費者政策を所掌する河野太郎内閣府特命担当大臣の冒頭あいさつに続き、全日本空輸の石井智二上席執行役員CX推進室長による基調講演、ならびに「デジタルトランスフォーメーション(DX)時代の消費者志向経営」をテーマに、先進的な取り組みを進める企業や消費者関連団体、消費者庁等によるパネルディスカッションを行った。概要は次のとおり。

■ 河野大臣あいさつ

河野大臣

消費者志向経営とは、お客さま相談や苦情への対応だけでなく、消費者があまり意識していないニーズの発掘、消費者の習慣や意識への働きかけを含めた概念である。例えば、歯磨き習慣の啓発、交通安全の呼びかけ、母乳バンクを通じた低体重児への支援等、さまざまな先進的な活動が行われている。お客さまの満足度向上につながるとともに、自社の従業員の満足度や仕事のやりがい、結果として企業価値の向上、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGsの達成に自然とつながっていく。それぞれの分野において、新しいニーズを発掘し、実現していく活動が広がることを期待している。

■ 基調講演「顧客体験価値向上に向けた取り組み」石井氏

石井氏

ANAグループでは、日常の生活、旅行前から旅行後までのさまざまなシーンを一つの「お客さま体験」としてとらえ、より良い体験価値を提供することを目指している。

サービス改善の最も重要な起点となるのがお客さまの声である。デスクに届く要望、係員が現場で気づいた事項、顧客調査の結果を分析して、顕在化した課題を全社横断で議論し、改善に努めている。また、顧客情報や運航情報等を集約した情報基盤を構築している。顧客情報や引き継ぎ事項などが表示される「CX(カスタマー・エクスペリエンス)ポータル」を利用することで、部門を超えてお客さまに一貫したサービスを提供している。加えて、サービス上の課題を全社で共有し、社員が解決策を提案できる社内プラットフォームを設けている。

従来は、空港におけるチェックインや案内等に多くの時間や人員を要していた。今後、デジタル技術を活用したサービスをさらに拡大することで、係員のサポートを希望するお客さまに対して、さらに必要なサービスを提供することが可能になる。新しい生活スタイルやお客さまのニーズに合わせて、今後もANAが提供する体験を進化させ、お客さま満足と価値創造を追求していく。

<パネルディスカッション>

第一生命経済研究所の宮木由貴子取締役・主席研究員をコーディネーターに、「DX時代の消費者志向経営」をテーマとするパネルディスカッションを行った。

全国消費生活相談員協会の増田悦子理事長は、さまざまな消費者に合わせた重層的な相談体制を整備し(例=メール、電話、チャットボット)、デジタル技術のメリットや安全性を提示することで、消費者の信頼を獲得すべきと指摘した。
カルビーの駒田勝コーポレートコミュニケーション本部長は、お客さまの声をもとに開発した睡眠サポート食品、商品入荷店舗の検索アプリの事例を紹介。消費者との協働、ワクワクするような体験の創出が重要と強調した。
ACAPの村井正素理事長は、お客さまの声やデータを改善活動につなげて、デジタルツールも活用し、消費者に寄り添うかたちで情報提供することが重要と述べた。
消費者庁の片岡進政策立案総括審議官は、デジタル技術は、消費者との協働や共創を促すツールであり、例えば、消費者の声を幅広く拾い上げることや、新たなサービスを創造することで社会価値を実現することが可能になると説明した。
議論を受けて宮木氏は、DX時代の消費者志向経営は、丁寧なコミュニケーションと信頼の獲得を通じて、消費者と事業者の間に、ワクワクする体験や共感、ウェルビーイング(幸福)の連鎖を生み出していくものであると総括した。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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