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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月16日 No.3583 全世代型社会保障と子ども・子育て支援の検討 -人口問題委員会

山崎氏

経団連は2月20日、人口問題委員会(永野毅委員長、清水博委員長、井上和幸委員長)をオンラインで開催した。山崎史郎内閣官房参与(社会保障、人口問題担当)から、「全世代型社会保障と子ども・子育て支援の検討」と題し、これまでの政府内での議論とともに、人口減少への対応を急ぐ必要性等について説明を聴いた。概要は次のとおり。

足元から2040年にかけて、生産年齢人口が1500万人減少するなど人口減少が本格化する。今回の全世代型社会保障では、40年をターゲットとして、人口減少への対応を最優先課題に掲げている。

全世代型社会保障の基本理念のなかで特に重要なのは、将来世代の安心の保障、能力に応じた全世代での支え合い、そして社会保障分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)の積極的な推進である。また、足元と中長期という時間軸、地域的な差異を考慮した地域軸の視点からも検討している。

日本の人口は2110年には5000万人まで減る。これは1915年ごろと同じレベルにすぎないので、「昔に戻るだけではないか」という意見もある。しかし、100年前とは大きく異なり、高齢化率が40%に近い「年老いた国」となる。このまま人口減少が進めば、国内マーケット規模の縮小および設備投資の減少、労働生産性の低下により、日本経済はマイナススパイラルに陥るおそれがある。

出生率向上の方策は百家争鳴で即効薬はない。とはいえ、わが国における少子化の要因の一つとして、仕事と子育ての両立が困難なため、若い世代が子どもを持つことを経済的リスクと考え、不安を抱いている点が挙げられる。

日本では、育児は母親任せで父親の参加が期待できず、母親も仕事との両立に苦しむなか、出生率の高いスウェーデンや米国のような「共働き・共育てモデル」が確立していないという指摘がある。

仕事と子育てを両立しやすくするためには、職場をはじめ社会全体での意識改革と柔軟な働き方を可能とする仕組みが不可欠であり、ぜひ経済界にも協力してほしい。かつての週休2日制と同様、日本はいったん動き始めたら、「共働き・共育てモデル」も急速に社会に定着するものと期待している。

岸田文雄内閣総理大臣は2023年1月、「こども政策の強化」について、(1)児童手当を中心とした経済的支援の強化(2)幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化(3)働き方改革――の三つの基本的方向性を示した。今後は、小倉將信こども政策担当大臣がたたき台を取りまとめ、6月の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)で予算倍増に向けた大枠が示される。

予算をすぐに倍増するのは難しいが、当面の対策においてもしっかりした取り組みが必要となる。現在、議論が盛り上がっている児童手当だけでなく、少子化対策として、総合的な対策に取り組んでいく必要がある。

財源については、現行の少子化対策が保険(雇用保険や医療保険)と公費(税)によって支えられていることも踏まえ、保険と公費をどう組み合わせていくかなど、大きな視点に立って議論し、できる限り早期に合意形成して、第一歩を踏み出す必要があると考えている。今後、こうした点でも経済界と議論していければと思う。

【経済政策本部】

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