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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年6月1日 No.3592 「DX時代の労働安全衛生のあり方に関する提言」を公表

経団連は5月16日、「DX時代の労働安全衛生のあり方に関する提言」を公表した。Society 5.0の実現に向けて、医療や教育等の各分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)が重要政策課題となるなか、労働安全衛生分野においても、デジタル技術とデータの活用を中心とした効率的・効果的な労働災害防止活動を模索していくことが欠かせない。そこで、政府に求める規制・制度改革等を提言として取りまとめた。概要は次のとおり。

■ 労働安全衛生をめぐる現状と課題

1972年の労働安全衛生法の施行から半世紀を迎え、わが国の労働災害は着実に減少してきた。他方、少子高齢化・人口減少社会の到来や産業構造・就業構造の変化、働き方の多様化、技術革新の進展など、社会環境の変化に伴う課題が生じている。具体的には、①デジタル技術とデータのさらなる活用 ②働き手の健康確保対策の強化 ③事業場をまたがる安全衛生活動の実施 ④労働者以外の者の安全衛生の確保――が求められる。

■ 政府に求める取り組み

提言では、前述の四つの課題の解決に向けて政府に求める取り組みを提示している(図表参照)。以下では、主な事項を5点紹介する。

(1)行政保有データの活用

労働災害が発生した場合に労働基準監督署に届け出る「労働者死傷病報告」をはじめ、事業者が提出する申請・届出等の情報・データを厚生労働省や関係機関が分析・活用し、精度の高い施策の企画・立案につなげるべきである。あわせて、企業や業界団体が自らの労災防止対策に役立てることができるよう、行政が保有する情報・データやその分析結果を公開すべきである。

(2)巡視規制の見直し

特定元方事業者(注)や産業医、衛生管理者等が行う作業場所や事業場の巡視について、法が求める安全衛生水準の確保を前提に、ウエアラブルカメラ等を活用して遠隔で実施できるようにすべきである。

(3)多様な主体による産業保健サービスの提供

産業保健をめぐる課題が多様化・複雑化する一方、事業者が必要とする産業医の確保は容易でないことを踏まえ、産業医が特に注力すべき職務と、他の産業保健スタッフ等(衛生管理者や保健師、看護師等を想定)の活躍も期待できる職務とを整理し、多様な主体の連携により産業保健サービスを提供できる仕組みを検討すべきである。

(4)安全・衛生委員会の共同開催

労働者数50人以上の事業場ごとに月に1回以上の開催が義務付けられている「安全委員会」や「衛生委員会」について、各事業場に特有な安全・衛生の課題を調査審議できることを前提に、事業場をまたがる共同開催を可能とすべきである。

(5)個人事業者等の災害実態を把握する仕組みの導入

個人事業者等の業務上災害の実態を把握し、エビデンスに基づく効果的な対策を企画・立案するため、労働者死傷病報告のような災害を把握する仕組みを新設すべきである。

(注)建設業と造船業に属する事業を行う元方事業者。元方事業者とは、同一場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者(数段階の請負関係がある場合には最も先次の請負契約における注文者)をいう

【労働法制本部】

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