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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年3月28日 No.3631 米大統領選挙の最新状況と地政学的な影響 -ユーラシア・グループとの懇談会を開催

リーバー氏

経団連は3月7日、東京・大手町の経団連会館でユーラシア・グループのジョン・リーバー マネージング・ディレクターリサーチ統括兼米国担当から、2024年11月に実施される米国大統領選挙の最新状況と同選挙の地政学的な影響等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 大統領選挙の動向

24年の大統領選挙ではジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領が争う。前回の選挙と同じ候補者が争うという意味で独特な選挙である。

大統領選挙では、激戦州と呼ばれるペンシルバニア、ジョージア等の6州の動向を注視すべきである。候補者の年齢と政党の団結は、重要なカギとなる。両候補者とも高齢であり、失言がみられる。一つの失言が選挙結果に影響を与えるかもしれない。また、激戦州では1%等の僅差で決着する可能性があるので、各党の支持者全員が自党の候補者に投票しなければ、異なる結果を生むことがある。

現在の米国経済は好調だが、インフレ圧力が強く、国民は現状に不満を抱いている。選挙が行われる年の6月の経済情勢が国民の投票行動に影響を与えると主張する政治学者もいる。この観点から6月の実質所得の伸びがポイントになるだろう。

トランプ氏の裁判も選挙に影響を与えるが、前回の大統領選の妨害をめぐる裁判の初公判は延期された。有罪となればトランプ氏に不利に働くと思われるが、選挙前に判決が出る可能性は低くなった。

選挙に影響を与え得る経済や移民の問題、裁判結果といった要因は、トランプ氏に有利に働くことも予想される。このため現時点では、トランプ氏が今般の選挙に勝利する可能性を60%と見積もっている。

大統領選挙と同時に行われる上下院の選挙については、上院は共和党が取り返す可能性が高い一方で、下院は見通しにくい。

■ トランプ政権下で考え得る政策

トランプ氏が政権を取ることになれば、さまざまな政策分野で現政権からの変更がみられるだろう。通商では、すべての輸入品に10%、中国からの輸入品には60%の関税を課すと表明している。前者については、新たなツールが必要となるので簡単ではないが、後者については議会を介さずに大統領の意思で導入することができる。また、中国とのデカップリングを進めていくことになる。日本企業はサプライチェーンを再検討する必要がある。

トランプ政権になれば、対中政策が強硬化する可能性が高く、中国の立場は厳しくなる。米国との間で移民等の問題を抱えるメキシコも今より厳しい立場になる。欧州では安全保障上の懸念が高まる。トランプ氏が北大西洋条約機構(NATO)への関与を弱めれば、多くの欧州諸国が外交・防衛政策を変更し、独自に防衛力を強化することによって、軍備競争が起こるかもしれない。ロシアとウクライナの戦争については、トランプ氏は停戦を迫り、ウクライナへの支援を停止するだろう。

これらの国と比較すれば、日本は対米関係で相対的に良い位置につくと思われる。

【国際経済本部】

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