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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年3月28日 No.3631 観光地経営の本質 -DMOと観光産業のあり方について/観光委員会企画部会

ワン氏(右)と池上氏

経団連は2月28日、東京・大手町の経団連会館で観光委員会企画部会(今泉典彦部会長)を開催した。今後のわが国の観光産業のあり方を検討するにあたり、米国を中心とした観光地域づくり法人(DMO)の現状等について、セントラルフロリダ大学ローゼン・ホスピタリティ経営学部のワン・ヨーチェン教授と早稲田大学大学院経営管理研究科の池上重輔教授から、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ DMOによる観光地経営の現状

世界におけるDMOの歴史は古く、およそ19世紀後半以前にさかのぼる。当初、DMOはプロモーションのみに重点を置いていた。しかしその後、組織的なマネジメントがなければ、観光地における価値提供の訴求力が弱く、目標とする観光客数を達成できないことが判明したことから、時代とともに、その機能を大きく変えてきた。現在は、DMOがセールス、マーケティング、サービスに至るまで、観光地域のブランドマネジメントを一気通貫で行っており、特に米国では大きな役割を担っている。

■ わが国観光地の課題

近年、日本の観光地では、オーバーツーリズムによる諸問題が顕在化している。その原因の一つとして、観光地経営が適切になされていないことが挙げられる。日本のDMOは観光地経営のための権限や資金を十分に有しておらず、マネジメントは困難とされている。それ以上にDMOが観光地全体を組織的に管理し、より多くの観光客を集客するための施策を総合的に実行できていない点が課題ではないか。

■ 米国における特徴

米国では、DMOが十分な予算を持ち、さまざまな施策で観光産業を支援している。例えば、活動資金の調達について、フロリダ州のDMOの一つである「Visit Orlando」では、年間予算の半分以上を観光客が支払う宿泊税で賄っていることが注目される。この宿泊税の導入に当たっては試行錯誤があった。しかし結果として、宿泊税による収入は、新たなインバウンド誘致に向けた施策に使用されるとともに、地域住民は所得税の軽減による租税負担が緩和されたことから、地域ぐるみでの観光振興による経済活性化と、税収入の増加による財政面での好循環につながっている。こうした観光地経営のあり方は、地域住民からも多くの支持を得続けており、日本も学ぶべき点は多いのではないか。

【産業政策本部】

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