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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年4月11日 No.3633 駐欧州大使との懇談会を開催

東原副会長

経団連は3月22日、東京・大手町の経団連会館で、欧州地域に駐在する大使との懇談会を開催した。経団連側は東原敏昭副会長・ヨーロッパ地域委員長、出雲充審議員会副議長、時田隆仁同副議長らが出席。東原副会長の冒頭あいさつの後、4人の大使から現地情勢等について説明を聴いた。概要は次のとおり。

右から相川大使、柳大使、鈴木大使、松田大使

■ 相川一俊 欧州連合代表部大使

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、この5年間、グリーンディールやデジタル政策を強力に推進してきた。とりわけグリーンディールは欧州委員会の一丁目一番地であり、炭素国境調整措置(CBAM)や2035年内燃機関車(除く合成燃料)新車販売禁止をはじめ、さまざまな規制を導入している。また、ロシアによるウクライナ侵略といった地政学的緊張の高まりを受け、EU域内の防衛産業の育成、産業競争力の強化および経済安全保障の確保も重要課題である。24年には、6月の欧州議会選挙後、次の5年間に向けて政策の仕込みが行われる。日本政府としても、経済界と連携しながらEUに働きかけ、ルールメーキングに関与していきたい。

■ 柳秀直 駐ドイツ大使

インフレは落ち着きつつあるものの、24年の経済情勢も厳しい見通しである。ロシアによるウクライナ侵略開始後も野心的な気候変動対策を維持し、23年4月には脱原発を完了した。その結果、エネルギー価格がさらに高騰し、オラフ・ショルツ政権への国民の不満が高まっている。加えて、ウクライナ難民の増大をめぐり、右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の支持率が上昇している。対中関係については、経済安全保障の観点から見直す動きが強まっており、今後、対中投資は減少するとみられる。他方、24年4月にはショルツ首相が企業を帯同して訪中予定と報道されており、自動車や化学業界での中国重視は続くだろう。

■ 鈴木哲 駐イタリア大使

ジョルジャ・メローニ政権は、マリオ・ドラギ前政権の路線を引き継ぎ、中道右派として政策を着実に実施している。24年6月のG7プーリアサミットは、(1)法の支配に基づく国際秩序の維持(2)グローバルサウス、特にアフリカとの協力強化(3)移民や気候変動対策、AIといったグローバル課題への対応――を主要テーマとして掲げている。エネルギーについては、ロシアのウクライナ侵略を受けてアフリカの資源に焦点を当て、イタリアが北アフリカと欧州をつなぐハブになることを目指しており、EUの資金を活用し、アフリカとの連携も進めようと計画している。また、欧州議会選挙では、欧州における右派・保守勢力の拡大を目指している。

■ 松田邦紀 駐ウクライナ大使

現在、ロシアによる侵略以後の被占領地の54%を開放し、また海上ではロシアの黒海艦隊を後退させ、穀物の輸出量は侵略前のレベルに回復しつつある。一方、ロシアのミサイル・ドローン攻撃が続いており、欧米諸国に対してさらなる武器供与を求めている。並行して、ウクライナ中部から西部を中心に、将来を見据えた復興計画が進められている。24年2月には、官民連携のもと、経団連会館で日・ウクライナ経済復興推進会議が開催された。日本企業に対する期待は大きい。エネルギー、インフラ、機械、医療といった分野のほか、穀物のアジア市場の開拓への協力が求められており、ウクライナに進出しているポーランドやトルコの企業と連携することも一案である。

【国際経済本部】

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