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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年6月27日 No.3642 OECD諸国の外国人移住政策の動向からみる日本への示唆 -産業競争力強化委員会外国人政策部会

デュモン氏

経団連は5月30日、東京・大手町の経団連会館で産業競争力強化委員会外国人政策部会(毛呂准子部会長〈当時〉)を開催した。OECDのジャン・クリストフ・デュモン移民課課長から、OECD諸国の外国人移住政策の動向からみる日本への示唆について説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 国際的な移住労働の動向

2022年の日本の総人口に占める外国生まれの割合は2.3%である一方、OECD諸国全体では10.4%である。各国の歴史や地理的背景によって差があるが、この割合はほとんどの国で増加している。日本の高技能外国人労働者の多くは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得して入国しており、その割合は10年前から倍増している。

コロナショックにより、国際的な人の移動は一時的に減少したものの、その後は回復傾向にある。

■ 国際的な人材獲得競争の激化と日本の魅力

こうしたなか、国際的な人材獲得競争は激化しており、OECD諸国全体で労働力不足が生じている。23年のマンパワーグループの調査では、OECD諸国において、雇用主の5人に4人はスキルを持つ人材の確保が困難だと回答している。日本もほぼ同水準であり、外国人労働者に頼らざるを得ない状況である。

人材獲得に当たっては、外国人労働者にとって、その国が魅力的であるかどうかが重要な要素となる。OECDの人材魅力度指標では、機会の質や所得・税制、将来性、環境等の七つの側面からOECD諸国を比較している。その結果、高学歴の労働者や起業家等にとって、日本は20位程度と低いものの、留学生にとっての魅力は8位である。実際、15年に来日した留学生の約40%が5年後も日本にとどまっており、日本における留学生の滞在率は、他のOECD諸国に比べて良好である。日本国内への留学をきっかけに、人材獲得の道筋を整備していく取り組みが求められる。

■ 日本が今後取るべき政策

これらの状況も踏まえ、日本が取るべき政策を二つ提言したい。

一つは、国際的な人材誘致を行うために、日本の魅力を積極的に発信することである。特に日本は、諸外国に比べて在留資格の最初の滞在可能期間が短いことや永住権取得のための居住条件(期間)が厳しいこと、内縁や同性のパートナーは同伴家族の定義から除外されること等について、改善の余地がある。

もう一つは、ミドルスキル(中技能)に注目し、人材を呼び込むことである。現在、政府では技能実習制度の抜本的な改革を行っており、ミドルスキルの受け皿となっている特定技能制度との接続性が高まることが期待できる。ミドルスキルの外国人労働者の新たな管理モデルが確立されれば、日本はこの枠組みにおける国際的なリーダーシップを取っていけるのではないか。

OECDは、こうした日本の外国人労働者に関する包括的な報告書を国立社会保障・人口問題研究所と共同で作成し、7月1日に公表予定である。

◇◇◇

経団連は、5月31日に新しく外国人政策委員会(深澤祐二委員長、大島卓委員長)を設置した。今後も国際機関との対話等を通じて外国人政策の検討を深めていく。

【産業政策本部】

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