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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年9月5日 No.3650 誰一人取り残さない人道支援のため企業の力に期待 -企業行動・SDGs委員会経団連1%クラブ

経団連は7月31日、東京・大手町の経団連会館で企業行動・SDGs委員会経団連1%(ワンパーセント)クラブ(福田里香座長)の会合を開催した。国連機関による人道支援の取り組みをテーマに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)、国連世界食糧計画(WFP)の3機関から、支援活動における強みや現場での組織間協力、企業との連携事例などについて説明を聴いた。概要は次のとおり。

左から津村氏、伊藤氏、杢尾氏、兼高氏

■ UNHCRの取り組み(伊藤礼樹駐日代表)

紛争や迫害等により、世界の難民・国内避難民は約1億2000万人にまで増加している。「誰一人取り残さない」というSDGsの理念を達成するうえで、彼らが世界のなかで最後に残された人々になりかねない。国連3機関の人道支援は重複していると思われがちだが、むしろ支援活動のはざまで漏れてしまう人々が生じることを問題視している。

UNHCRの人道支援は、難民の基本的権利の保護から、生活を支える緊急支援、生計・自立支援、帰還や第三国定住という最終的な問題解決に至るまで、多岐にわたる。

企業等からの寄付金を現地通貨で給付する際には、UNICEFやWFPと連携して、銀行と為替レートを交渉することもある。また、企業が有する虹彩認証技術を用いた難民登録は、給付の効率化に大きく貢献している。

■ UNICEFの取り組み(杢尾雪絵ジュネーブ民間支援企画調整局副局長、兼高佐和子同局グローバル企業パートナーシップマネージャー)

紛争や災害の影響を受けている人の半数は子どもである。また、世界の子どもの半数に当たる10億人が極端な気候変動リスクのある国で生活している。

UNICEFは、緊急支援のみならず、緊急事態の発生前・収束後も、子どもの権利・保護の支援に努めている。迅速・効率的な緊急支援のために、当該国の国連機関それぞれが強みを発揮しながら連携して活動に当たる「クラスター・アプローチ」を展開するなか、UNICEFは水と衛生、栄養、教育、子どもの保護を主導している。

ウクライナ紛争やコロナ対応を契機に、日本企業の人道支援への関心が一段と高まったと感じる。例えば、社員募金や企業による同額マッチング寄付の実践、青少年向けのデジタル教育やメンタルヘルス支援等の協力事例がある。海外企業では、製品の売り上げに応じた寄付(日本企業も開発関連プログラムの支援は実施)、輸送サービスや倉庫の提供等のロジスティクス支援も行われている。

■ WFPの取り組み(津村康博日本事務所代表)

世界では、約7億5700万人が飢餓に苦しんでおり、このうち約3億人が生命を脅かされる「急性の飢餓」に直面している。飢餓の主な要因は、紛争や気候変動に加えて、経済危機(食料・エネルギー価格の高騰)である。

WFPの活動は、(1)飢餓に対し命を救うための緊急食料支援(2)学校給食や母子栄養改善等の成長を支える支援(3)災害等のショックに強い地域社会の構築や小規模農家への支援などを含む、自立のための支援――に大別される。

WFPの強みは物流であり、毎日5000台のトラック、152機の飛行機、20隻の船を稼働させている。また、人道支援に携わる他団体職員の輸送なども行っている。

活動に当たり、食料の買い付けや輸送、通信システム利用等において、民間企業との協力が不可欠である。日本企業とも、車両点検・修理訓練プログラムを通じた物資輸送の迅速化等の実績がある。現地とのつながりが深いわれわれと組むことで、企業の現地での活動も円滑になるだろう。

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この他各機関から、企業からの寄付や技術支援、社会啓発活動における企業との協力・連携により、課題解決に向けてインパクトを創出したいという期待が寄せられた。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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