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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年6月19日 No.3687 「2040年の産業構造の姿」と人材育成 -教育・大学改革推進委員会

今里氏

経団連は5月21日、東京・大手町の経団連会館で教育・大学改革推進委員会(小路明善委員長、橋本雅博委員長)を開催した。経済産業省経済産業政策局の今里和之産業人材課長から、「2040年の産業構造の姿」と人材育成について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 40年の産業構造の姿

経団連は、25年1月の「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」において、40年度に名目設備投資額を200兆円とする目標を打ち出した。この目標の実現のためには、官民で引き続き国内投資の拡大を継続していくことが重要である。

経産省は、経済産業政策の基本的方向性として、(1)国内投資の拡大(2)イノベーションの加速(3)国民の所得向上――の三つの好循環の実現を掲げてきた。

そしてこのたび、こうした方向性と産業構造の転換を踏まえ、40年の経済の見通しを「2040年に向けたシナリオ」として定量化した。これにより、人口減少を前提としても、戦略的な国内投資とAI・ロボットによる労働生産性の向上が実現できれば、名目GDPが3.1%、実質GDPが1.7%のプラスとなり、経済成長が可能であることが示された。

将来の産業構造については、マクロ経済の成長に必要な産業構造転換を、労働生産性や賃金のスカイラインチャート等で定量的に示した。カギは大きく三つである。

一つ目は製造業。グリーントランスフォーメーション(GX)・フロンティア技術による差別化や、デジタルを活用したサービス化等で高付加価値化していくことにより、雇用の拡大と賃上げが実現できる産業となり、国内経済で一定程度重要な地位を占めると考えられる。

二つ目は情報通信業・専門サービス業。フロンティア技術等により、製造業の高付加価値化やサービス業の省力化などが進む際に生まれる新需要を開拓することで、新たな付加価値を創出していく。こうした変化で、他産業を上回る賃上げを実現する成長産業となる。

三つ目はエッセンシャルサービス業。省力化投資を使いこなし、賃上げを実現できる産業である「アドバンスト・エッセンシャルサービス業」に変化することが期待される。

■ 40年の就業構造推計

こうした将来の産業構造を実現するための就業構造について、「2040年に向けたシナリオ」の定量化と連動して推計した。同シナリオの「新機軸ケース」では、少子高齢化による人口減少に伴って労働供給は減少するものの、AI・ロボットの活用促進や、リスキリング等による労働の質の向上により、全体としては大きな人手不足は生じない見込みとなった。

一方、現在の人材供給のトレンドが続いた場合、40年の産業構造の姿に照らすと職種間・学歴間の需給のミスマッチが生じるリスクがある。

全ての産業でAIやロボット等の活用を担う人材が不足する一方、事務・販売・サービス等の従事者は余剰が生じる可能性がある。また、研究者や技術者等の専門職を中心に学部・院卒の理系人材が不足し、生産工程を中心に短大・高専および高卒の人材が不足する一方、大卒文系人材は余剰する可能性がある。

こうしたミスマッチを防ぐには、戦略的な人材育成や円滑な労働移動を推進する必要がある。

■ 人材育成に向けた施策

経産省は、産学連携による人材育成の強化と、キャリア自律に向けたリスキリングの強化を推進する施策を展開している。

前者については、産業界の将来の人材需要を踏まえた地域ごとの戦略的な産業人材育成を推進するためのプランを文部科学省と検討している。

後者については、分野横断的な人材育成の推進に向けて、在職者のキャリア相談からリスキリング、転職までを一体的に支援する事業を行っており、昇格や転職後の賃金上昇といった成果が出ている。また、必要な部分に特化した短時間のリスキリングにも効果があることが分かってきている。

デジタル、グリーン等の成長分野における人材育成については、例えば、半導体や蓄電池といった業界が、地域においてコンソーシアムをつくり、産学官で連携した分野別の人材育成を進める取り組みも足元で始まっている。

こうした取り組みを参考にしつつ、将来の展望を見据えながら、次に重要となる分野の人材育成を戦略的に推進していく。

【教育・自然保護本部】

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