
あいさつする筒井会長
経団連(筒井義信会長)と東北経済連合会(東経連、増子次郎会長)は9月18日、仙台市内で「第57回東北地方経済懇談会」を開催した。経団連からは筒井会長、冨田哲郎審議員会議長、副会長らが、東経連からは増子会長をはじめ会員約170人が参加し、「人口減少時代の地域イノベーション~2040年を見据えた、選ばれる地域・企業を創る経済界の挑戦」を基本テーマに意見交換した。
経済懇談会に先立ち開催した昼食懇談会では、東北大学の冨永悌二総長から、国際卓越研究大学としての同大学の取り組みについて説明を聴くとともに、東経連首脳を交えて意見交換した。
経済懇談会の開会あいさつで東経連の増子会長は、東北・新潟地域の強みとして、世界に誇れる観光資源、魅力ある農水産物、進展中の各種科学技術プロジェクトなどを指摘。こうした強みを生かし、イノベーションや高付加価値型産業の創出、地方への新たな人の流れを呼び起こしていきたいと述べた。
続いて筒井会長があいさつ。内外情勢に係るリスクが頻発化、巨大化、常態化する混迷の時代にあって、成長と分配の好循環を着実に実現し、あらゆるリスクに対してレジリエントな経済社会を構築することに注力することを通じて、企業がフロントランナーとして、覚悟を持って将来世代への責任を果たしていくとの決意を示した。
■ テーマ1「人材と組織の変革による“選ばれる企業”づくり」
若者・女性に選ばれる理想の地域企業像に関し、東経連から問題提起があった。これに対して経団連から、
- (1)若者・女性に選ばれる企業づくりには、経営トップからのメッセージ発信による組織風土改革に加え、マネジメントの工夫や柔軟な働き方の推進、育児期の社員を支える周囲の社員への支援等を講じることが重要(長澤仁志副会長)
- (2)企業は、ジョブ型採用などの導入と拡充といった労働移動の入り口となる採用方法の多様化に加え、リカレント教育の推進などにより「仕事と学びの好循環」を実現し、地域への人口流入へとつなげていくことが重要(小路明善副会長)
――との発言があった。
■ テーマ2「地域発イノベーションとGX(グリーントランスフォーメーション)・DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速」
地域企業のイノベーション創出に関する東経連からの問題提起に対しては経団連から、
- (1)イノベーション創出に向けた「科学技術立国」の検討に際しては、科学技術のみならず、科学技術と産業・社会との関係と、これらを下支えする思想・哲学との関係も掘り下げて議論することが不可欠である(澤田純副会長)
- (2)経団連として、「スタートアップフレンドリースコアリング」の取り組みなどを通じ、スタートアップエコシステムの形成に努めていくとともに、企業がよりイノベーティブになるうえで不可欠な視点を発信していく(木原正裕副会長)
- (3)東北地方は多様なエネルギーのポテンシャルや研究開発拠点が豊富にあることから、日本のエネルギー転換を先導する潜在力を有しており、GXの実現に資する新技術や新産業の創出が期待される(泉澤清次副会長)
――との発言があった。
■ テーマ3「広域連携による“選ばれる地域”の実現」
広域リージョン連携の推進についても、東経連から問題提起があった。
これに対して経団連の永井浩二副会長から、経団連では行政区域にとらわれない連携のあり方として「新たな道州圏域構想」を提唱しており、今後も「わきたつ東北戦略会議」の取り組みをはじめとするプロジェクトが発展していくことを期待している、との発言があった。
最後に、経団連の冨田審議員会議長が、社会課題の解決に向けて経済界が果たすべき役割、寄せられる期待は日々大きくなっているとの認識を示したうえで、マルチステークホルダー資本主義に沿った企業経営が、本日のテーマである「若者・女性」をはじめ、選ばれる企業づくりにつながっていくと総括した。
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翌19日、一行は宮城県女川町の東北電力女川原子力発電所を視察。24年に再稼働した2号機建屋内や防潮堤などを視察し、安全対策の取り組みなどについて理解を深めた。

女川原子力発電所を視察(提供:東北電力)
【総務本部】