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Policy(提言・報告書) 国際協力 提言別紙
<過去1年間において高く評価できる取組みと具体的な要望>

提言「戦略的なインフラシステムの海外展開に向けて -2022年度版-」別紙

以下は、経団連開発協力推進委員会委員へのアンケート調査結果に基づき、日本政府および関係機関の過去1年間の現状を評価したうえで、具体的要望を整理したものである。

(PDF版はこちら

1.日本政府

(1)高く評価できる取組み
① インフラ海外展開に関する施策等の推進
  1. 「インフラシステム海外展開戦略2025」の追補(6月)および具体的メニューを通じた支援#1の継続
  2. 「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)」、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」に基づき、地域の脱炭素の着実な移行に向けて、包括的な支援を推進
  3. 環境インフラの海外展開に向けた「JCM設備補助事業」の推進や、JCMパートナー国の積極的拡大#2
  4. 「鉄道技術標準化調査検討会」を軸とした鉄道分野の国際標準化戦略の推進
  5. 内閣官房経協インフラポータルの構築を通じた、インフラシステムの海外展開に関する支援メニューや窓口等の情報提供の充実、利便性の向上
② 海外への情報発信と訴求
  1. 各種の国際会合の実施#3等を通じて果敢にリーダーシップを発揮。新型コロナウイルス感染症の拡大による海外との往来の停滞等、厳しい制約下においても、インフラシステムの海外展開に向けた日本企業の存在感向上に貢献
③ 日本企業に対する支援
  1. 在外公館による日本企業への情報提供、現地政府・企業への働きかけおよび関係構築など、各種の支援を推進。特に、突然の政変等の有事により、一民間企業では解決できない問題が発生した際、より手厚くきめ細かな支援を実施
  2. 新型コロナウイルス感染症の拡大で海外での企業活動に制約が生じる中、ウェビナー等を通じ、日本企業のニーズの収集と整理、支援メニューの周知による支援を継続
(2)具体的要望
① グリーンインフラの展開

(ⅰ) 脱炭素技術の開発と実装

  1. AETIの枠組みも活用したアジア、また、アフリカ等、各国のカーボンニュートラルに向けた長期戦略策定への積極的関与#4。わが国の脱炭素分野の技術、制度、ルール整備等を紹介し提案する官民フォーラムの創設
  2. 水素・アンモニア、既存石炭火力発電所への導入も視野に入れたCCS・CCUS等、新規技術を含む脱炭素分野#5における事業推進支援#6
  3. 水素・アンモニアに関する、製品・サービスの販売をはじめとした、製造・輸送・貯蔵・流通・消費を含めたサプライチェーン全体における事業推進支援。特に、国際的な市場の立ち上げ、関連インフラの整備、制度金融の拡充#7
  4. 火力発電#8のさらなる効率性向上と低炭素化のため、高効率石炭火力技術の活用や既存石炭火力発電所におけるアンモニア混焼に加えて、現在の公的支援の維持を含むガス火力発電の一層の活用およびLNGのサプライチェーンに係るインフラ整備の推進など、わが国の優れた技術に基づく現実的なエネルギートランジションの達成に向けた後押し。
  5. 各国政府・関係機関との対話による再生可能エネルギーの導入拡大、二国間の協定等を通じた実装支援
  6. 各国の事情を適切に踏まえたエネルギートランジションの実現およびエネルギー安全保障の確保、日本企業がノウハウを持つ系統安定化技術#9をパッケージ化した再生可能エネルギー導入支援の推進
  7. 長期投資を前提とする再生可能エネルギー事業に関し、ホスト国・地域における支援制度の安定的な運用に向けた、相手側政府、関係機関への働きかけ

(ⅱ) JCM(二国間クレジット)等のカーボンクレジットの活用

  1. パートナー国・地域のさらなる拡大#10
  2. JCM設備補助事業について、予算の拡充・補助金の増額、対象事業・設備の拡大#11、現状3年の支援期間の延長#12、採択時期の柔軟化#13、モニタリング期間の短縮や効率化、還付方式から前払い方式への変更等、制度の使いやすさの追求。新たなパートナー国における案件については、新規性に配慮して特に積極的な支援を期待
  3. JCMを活用するメリットの整理などを通じたホスト国側の理解醸成およびカーボンクレジットの売買制度設計に関するキャパシティ・ビルディング
  4. 民間主導による案件形成を促進するための制度や仕組みの構築#14、クレジットの配分などをめぐる、ホスト国と民間企業との交渉における日本政府の支援
② インフラにおけるデジタル技術活用の推進
  1. 技術革新のスピードとサイクルが非常に速いというデジタルトランスフォーメーション(DX)分野の特性を踏まえた、案件形成のより一層の迅速化
  2. スマートシティの海外展開に向けた、海外政府を含む官民の実務者レベルでの意見交換会の実施や特別目的会社の設立等に係る出資等の支援
  3. デジタル田園都市国家構想のモデルとなる取組みの海外発信・展開に向けた、重点地域戦略やプロモーション戦略の策定、官民の役割の整理、海外での資金調達に際しての政府支援のあり方の検討#15など、施策の具体化
③ 質の高いインフラシステムの国際認証制度の活用
  1. 「ブルードットネットワーク(BDN)」について、インセンティブを含め、企業とホスト国にとって使いやすく柔軟性を備えた制度設計
④ 法制度やルールの整備
  1. 信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)に係るルールの確立
  2. サプライチェーン全体での排出量#16に関する議論において、日本企業の脱炭素インフラシステムの輸出を加速する観点から、社会全体の温室効果ガスの削減貢献量を評価する新たな価値軸の構築に向けた国際的な働きかけ
⑤ 国際標準化の戦略的推進
  1. 国際展開を視野に入れた、わが国の技術基準・規格類の体系的な整備
  2. わが国の技術基準・規格類の英訳と内容の改善
  3. ISO/IEC等の国際標準へのわが国技術の反映に向けた、取組みの加速
  4. ホスト国の基準や規格にわが国の技術基準・規格類を採用するための、トップセールスを含む取組みの推進
  5. 日本政府・日本企業における国際標準化戦略の推進を支える人材の育成
  6. 認証機関や業界団体のさらなる拡充に向けた、業種横断的な連携の推進、認証員の人事交流および専門人材のキャリアパスの構築などの支援
  7. インフラシステムを輸出する際に発注者から求められる国際規格等に日本企業が対応するための資金支援スキーム創設
⑥ ビジネス環境の改善
  1. ホスト国の法制度等の整備を通じた、投資・事業環境の改善
  2. PPPの推進に向け、需要リスクの共有を目的としたアベイラビリティ・ペイメントの導入に関するホスト国への働きかけ
  3. 実効的な紛争解決メカニズムの導入
  4. 免税措置、付加価値税還付等を履行しないホスト国に対する働きかけの継続と、改善が見られない場合の実効的な対応策の実施
  5. 租税条約締結の有無により、競合国に比べて不利な条件を強いられている国・地域における状況の解消
⑦ 人材育成の強化
  1. ホスト国・地域の政府高官、若手官僚等の人材招聘の戦略的推進や現地オペレーション人材の育成等、キャパシティ・ビルディングの強化
⑧ 情報収集・展開、相手国政府との交渉の関与等を含む強力な後押し
  1. トップセールスや在外公館の体制強化を含む、相手国政府との関係構築と強化に向けた取組みの一層の推進
  2. 気候変動対策や経済安全保障などの観点で重要な国・地域や、新型コロナウイルス感染症の拡大によりアクセスが制限される国・地域とのさらなる関係強化
  3. アフリカ地域に関する、アフリカ・インフラ協議会(JAIDA)の一層の活動強化
  4. 一民間企業は相手国政府との関係で弱い立場にあることが多く、特に交渉が難航した場合や問題が発生した際、日本政府・在外公館・関係機関による仲介・支援を期待。スリランカ、ミャンマー等の円借款案件の資金回収については、一民間企業単独での交渉は実際問題として不可能であり、日本政府・関係機関による支援が不可欠
  5. 各国の実情やニーズ等の現地情報および競合国の政策・戦略に関する情報の適時適切な提供#17
  6. 海外の輸出信用機関(ECA)の支援メニューや実例等を総覧できる資料の整備等、包括的な最新情報の収集と提供#18
  7. ホスト国・地域のインフラ関連当局や顧客の紹介、意見交換会・連絡会の開催等によるマッチング機会創出
  8. 経済産業省の「質の高いインフラ及びエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業」など、F/S支援をはじめとした公的支援のさらなる拡充#19
  9. 国連をはじめとした国際機関や国際開発金融機関(MDBs)が途上国支援等を目的に、世界各国の企業から物品・サービスを調達する際、日本企業に裨益するようなスキーム#20の検討
  10. 「インフラシステム海外展開戦略2025」のPDCAの実施、適時適切なフォローアップ
  11. 省庁の縦割り解消とともに、各機能を統合した取組みの推進。特に、新規事業領域の案件支援促進に向け、省庁を横断する分野または省庁間の隙間に落ちる分野の案件において、柔軟かつ迅速な支援に向けた省庁間連携の一層の促進

2.JICA

(1)高く評価できる取組み
① インフラ海外展開に関する施策等の推進
  1. 円借款の本邦技術活用条件(STEP)により、日本企業が参画しやすい施策が継続された結果、案件の拡大が実現
  2. 中小企業・SDGsビジネス支援事業により、途上国の社会課題解決や経済・産業振興に資する事業開発を双方の官民連携で推進
  3. 途上国における未整備の社会インフラに対する、最新のデジタル技術や革新的サービスの導入支援を目的に、世界規模のDXLabを設立
② 日本企業に対する支援
  1. 各国政府と日本企業との関係構築・強化
  2. 「途上国ニーズと民間技術マッチングに係る情報収集・確認調査」など、新しいビジネス展開への支援
  3. 円借款事業における日本企業へのきめ細かく親身になった支援。現地政府の契約違反や相手方事由による、事業の大幅遅延などのトラブルの際、協議の場への同席、相手方への是正要求・支払督促などにおいて問題解決に向けた支援
  4. 新型コロナウイルス感染症の拡大をはじめ、多くの制約下における積極的な事業継続および影響を受けた案件への柔軟な対応
(2)具体的要望
① 戦略的なODA推進とホスト国・地域への働きかけ強化
  1. 自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現や、わが国の経済安全保障も意識したODAの戦略性の一層の強化
  2. ホスト国・地域へのプロジェクト提案型アプローチの推進。特に、脱炭素化のように、市場が未成熟で民間にとって収益性が不透明な領域における法制度やルールの整備など、ソフトインフラ整備を含む横断的なプロジェクトの提案
  3. 新規案件形成に向けた、さらなる情報収集と民間企業への情報提供の拡充#21
  4. 各国・地域への技術協力等を通じた、専門家派遣の維持・強化
② 各種支援策の拡充および柔軟化・迅速化
  1. 日本政府内審査を含むODAプロセスの簡素化、効率化#22、借款契約(L/A)または贈与契約(G/A)締結後の速やかな事業化を含む案件推進。特にデジタル・ICT分野においては、スピードこそが最大の鍵であり、より一層短期間での案件形成が不可欠
  2. 借款契約(L/A)または贈与契約(G/A)締結から見積提出までの数年間に生じた、物価や為替の変動を反映できるような制度の見直し#23
  3. 無償資金協力の主契約者条件の緩和#24など、ODA制度の柔軟化#25
  4. 円借款の本邦技術活用条件(STEP)など、日本企業の案件拡大につながる制度のさらなる推進・拡充#26
  5. ライフサイクルコストの観点から、真に質の高いインフラシステムの海外展開に資するよう、実績や技術競争力を備えた事業者が高い評価を得られる入札方式#27の適用
  6. わが国のサブコントラクターが持つ優れた技術の普及促進に向けた、「中小企業・SDGsビジネス支援事業」のさらなる強化#28
  7. 新型コロナウイルス感染症の拡大やロシアによるウクライナ侵略に起因して脆弱性が顕在化する中進国を支援する、新規メニューの創設#29
  8. アフリカ諸国の債務危機に対する、積極的な解決策の検討と提案、新規借款の供与の模索
  9. 円借款の事業開始に関する諸経費(登録費用等)の扱い(ホスト国・地域側の負担か否か)の明確化
  10. CCAGなどのFIDIC以外の標準契約約款をJICA標準約款の一部とする場合の英文版の準備
③ O&Mに関する支援
  1. 日本企業の中長期的な収益確保や他国との差別化を図る観点から、ハード・ソフト一体となったO&M案件の形成#30
  2. デジタル・ICT案件においては、技術革新が早く、機器の更新やソフトウエアのライセンス更新・アップグレードが頻繁に発生することを踏まえた、O&Mを適時適切に支援するための制度拡充#31
④ グリーンおよびデジタル分野の支援促進
  1. グリーン#32およびデジタル分野におけるF/Sと実証に対する支援強化や制度の利便性向上#33を期待
  2. 廃棄物発電(清掃工場のごみ焼却時に発生する熱で発電する方式)、地熱発電における坑井掘削・開発、洋上風力発電のような長距離送電が必要となる場合に注目される直流送電など、わが国が強みを持つグリーン分野に対するODAによる積極的な後押し
  3. グリーン分野における日本企業の海外進出促進およびわが国の排出削減目標の達成に寄与する、新しい支援メニュー#34の創出
⑤ PPP促進に向けた支援強化
  1. 拡大基調にある世界のインフラ需要に対応するため、PPPの一層の活用を促す支援策の強化#35
  2. PPPプロジェクトの組成、実施、管理に不慣れなホスト国政府・関係機関を対象とする、法令・環境整備や人材育成等に係るキャパシティ・ビルディング
⑥ トラブル解決に向けた支援強化
  1. ミャンマーで発生した国軍クーデター、ロシアのウクライナ侵略など、突然の政変や紛争が発生した場合、事業の予見可能性を確保する観点およびレピュテーションリスクから契約事業者を保護する観点から、適時適切な情報開示および現地情勢の変化に則した、迅速かつ柔軟な政府のODA方針の策定と公表
  2. 受注案件の契約価格に、その後の資機材費等の価格変動を反映させるエスカレーション条項の設定や契約見直しを可能にするなど、ODA案件が契約者の責任外で中断する事態を想定した対策の構築
  3. 資源価格の高騰や急激な円安による事業費の増大に対応した、贈与・借款の実施や、日本企業に生じた追加コストの補填など、柔軟で迅速かつ機動的な救済措置
  4. ホスト国の信用や遂行能力に問題が発生した際、適切に介入できる仕組みの構築#36
  5. ホスト国において対外債務不履行が発生し、貸付が停止された場合、ホスト国政府から施工者への支払いも停止される恐れがあることを踏まえた、実施中の円借款案件への貸付の継続
  6. ウクライナをはじめ、世界的に治安が不安定となっていることを踏まえ、外務省が危険レベル2以上とする国でのODA事業に対する、警護や防犯対策費用の支援
  7. ホスト国政府が予算措置を怠ったことで支払いが滞るなどの事案に対し、ホスト国側への要望申し入れ#37、費用負担#38等、主体的な関与と柔軟かつ継続的な支援。また、トラブル時の交渉が容易になるような契約スキームの見直し#39
  8. 税金問題、ホスト国政府負担事項の不履行問題の解決に向け、交換公文(E/N)上に案件毎の対象税目の明記。また、その実行性の担保として、JICAからホスト国側の財務省・徴税当局へ免税案件の通知・周知を書面で発出するなどの一層の取組み
⑦ 海外投融資の強化
  1. JICAの海外投融資は評価が高く、関連する予算の拡大とさらなる体制強化#40
  2. 新たな領域における先導性の高い案件や開発効果の大きい案件において、特に民間企業だけではリスクテイクが難しい場合の積極的な支援

3.JBIC

(1)高く評価できる取組み
① 法改正等による機能の増強
  1. 「ポストコロナ成長ファシリティ」を地球環境保全やバリューチェーン強靱化の観点から発展的に拡充した、「グローバル投資強化ファシリティ」の創設および政令改正による先進国業務の拡大
  2. 次世代エネルギー戦略室の新設による、水素・アンモニア、その他の次世代エネルギーに関する事項への対応の一元化
② 日本企業に対する支援
  1. 在外公館と連携して相手国政府に書簡を提出し、承認の早期取得を図るなど、案件形成段階からの連携・支援
  2. インフラシステムのライフサイクルに亘る、信頼性や経済性、質の高さの重要性に鑑みた金融支援
  3. グリーン分野やエネルギートランジション分野での積極的な金融支援
(2)具体的要望
① 各種支援策の拡充・柔軟化
  1. インフラシステムの海外展開に関するリスク軽減を図るための、融資メニューの拡充#41や条件の緩和#42
  2. 各種制度の設計段階における、官民による意見交換の充実
  3. 大型プラント案件などで、外国企業が主契約者となり本邦企業が下請となる場合の本邦企業取扱品目に対する、ローカル・バイヤーズ・クレジットの適用
  4. O&Mに関する、ローカル・バイヤーズ・クレジット等を通じた支援
  5. ローカル・バイヤーズ・クレジットに関する英語による情報発信#43やオンラインでの各種手続きの実施
  6. ファイナンス期間中の持分譲渡制限に関する条件の緩和#44
  7. 実例の見える化による制度活用の促進
  8. 先進国業務のさらなる拡大#45
  9. サブ・ソブリン案件向けの融資供与拡大#46
  10. スタートアップへの投資はリスクが高い場合もあることから、特別ファンド枠の創設などによる海外進出支援の強化など、スタートアップ支援メニューの一層の強化
  11. 協調する市中銀行が難色を示すケースでの単独融資など、高リスク案件#47に対する積極的なファイナンス支援
  12. 資材調達先をわが国に限定しない貸付であるアンタイドローン供与が、日本企業のビジネス機会につながるような仕組みの模索
  13. 現地での工事や調達に対するアンタイドローンによる並行融資等、アフターサービスやわが国からの輸出品(設備やソフト等役務)を完成させるために必要な施策の推進
  14. 他国の輸出信用機関(ECA)との協業関係の維持・強化
  15. JBICとの協調融資における、わが国の民間金融機関の融資部分について、NEXIの保険を付保する場合、JBICとNEXIとで求められる日本裨益(日本企業出資比率)の緩和要件が異なることから、統一的な見解の提示などの改善
② グリーン分野の支援促進
  1. 欧米諸国内のグリーン分野の大型案件に対する積極的な輸出金融供与
  2. 水素、アンモニア等、グリーン分野の新しい技術#48への資金面での支援、競争力ある融資の供与、日本企業の出資参画支援など、民間金融機関が取れないリスク負担
  3. わが国の高効率石炭火力#49、ガス火力発電への積極的な融資
  4. 既存のIPPや石化プラント案件と脱炭素案件を組み合わせたファイナンス支援メニューの作成

4.NEXI

(1)高く評価できる取組み
① 法改正等による機能増強
  1. 改正貿易保険法(2022年4月8日成立)に基づく制度改正#50
② 日本企業に対する支援
  1. ロシアによるウクライナ侵略等により、国際物流に影響が出る中での貿易保険によるビジネス支援
(2)具体的要望
① 一層の機能増強および柔軟化
  1. 審査の迅速化、付保条件#51・事業不能要件等の緩和#52など、柔軟な対応および積極的な案件引受#53
  2. ミャンマーにおける国軍クーデター、ロシアによるウクライナ侵略など、突発的な事態が発生した場合の柔軟な対応
  3. 海外現地法人の対外取引に関する一層の支援#54
  4. わが国の民間金融機関による、融資期間中のディストリビューションの一層の許容#55
  5. 制度改善・新制度設計に向けた、利用者ニーズを収集する機会の設定
  6. わが国の民間金融機関が介在しない場合の積極的な適用など、LEADイニシアティブの積極的な推進
② グリーン分野の支援促進
  1. 保険料率の見直しやカバー率の底上げなど、水素、アンモニア、CCS・CCUS等、グリーン分野の支援拡充

5.その他政府機関

(1)高く評価できる取組み
① 法改正による機能増強

(JICT)

  1. ICTサービス事業への支援やリミテッドパートナーとしての出資が可能になり、海外事業において展開方法の選択肢が増加

(JOGMEC)

  1. 水素・アンモニア等の製造・貯蔵への出資・債務保証業務やCCS・CCUS等への出資・債務保証業務および地質構造調査業務が可能になるなど、脱炭素事業に対する支援機能が向上
② 日本企業に対する支援

(JOGMEC)

  1. 「CCS事業実施のための推奨作業指針(CCSガイドライン)」および「LNG・水素・アンモニアの温室効果ガス排出量及びCarbon Intensity算定のための推奨作業指針(GHG・CIガイドライン)」の策定を通じた、日本企業の事業支援の強化
(2)具体的要望
① 各種支援策の拡充

(JICT)

  1. 海外現地が抱える課題等、事業機会につながる情報の提供

(JICTおよびJOIN)

  1. スマートシティなど、支援分野がJICTとJOINにまたがる案件の取り扱いの整理など、投融資ファンドの適用事業の柔軟化
  2. 単独出資に関する条件の緩和#56

(JOIN)

  1. 案件開発調査等のさらなる推進

(JOGMEC)

  1. 日本企業と連携した海外展開の推進
  2. 「CCSガイドライン」「GHG・CIガイドライン」の必要に応じたブラッシュアップ

(NEDO)

  1. 国際実証事業の体制強化#57および手続きの簡素化
以上

  1. 「質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業費補助金」「産油国石油精製技術等対策事業費補助金」など。
  2. 2022年には新たに、セネガル、チュニジア、アゼルバイジャン、モルドバ、ジョージア、スリランカ、ウズベキスタン、パプアニューギニアとJCMを構築した結果、パートナー国は従来の17カ国から25カ国に増加。
  3. 第8回アフリカ開発会議(TICAD8)(8月、於チュニス)、第2回アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合(9月、於東京)、日タイ・エネルギー官民ビジネスフォーラム(10月、於バンコク)、第13回日・フィリピン経済協力インフラ合同委員会会合(11月、於マニラ)、第6回日・サウジ・ビジョン2030閣僚会合(11月、於東京)、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合(2023年3月、於東京)など。
  4. TICAD8で打ち出された「アフリカ・グリーン成長イニシアティブ」の推進も重要。
  5. 他に、蓄電技術、CO2を回収し合成メタンを製造するメタネーション技術、二つのエネルギーを同時に生産し供給する高効率のコジェネレーションといった熱エネルギーを有効生産・利用する技術など。
  6. F/S支援、洋上風力・地熱開発に係る初期の海域確保や地質調査の開発費用支援、新規技術を活用した案件に対する大規模な実証プロジェクト支援、収益性が不透明でリスクが大きい案件に対する支援、原子力案件向けのファイナンスプログラムの構築など。日本企業の現地法人も利用可能な支援策とすることが重要。
  7. 製造方法(ブルー・グリーン等)によらず支援対象とすることも重要。
  8. 石炭火力発電を必要とする途上国も多く、公的支援に加え、当該国・地域にとっての石炭火力発電の切実な必要性を国際社会に発信して理解を醸成しつつ、効率性向上と低炭素化の観点から継続して支援することも重要。
  9. 出力が変動する再生可能エネルギーが大量に導入されると、電圧や周波数等の面で系統の不安定化が懸念されるため対策が必要。
  10. 特に、インド、マレーシア、台湾、中央アジア、東ヨーロッパ等を期待。
  11. 化石燃料による発電の高効率化、新規分野(水素・アンモニア、CCS・CCUS、国境を跨ぐ事業)や蓄電池システムなど。設備の整備に対する支援のみならず、プロジェクト自体(一般管理費・人件費等)への支援も期待。
  12. 地熱発電など3年を超える設備投資が必要な分野がある。
  13. 年一回または二回の採択では、入札やパートナー企業との対話等のタイミングと採択時期が合致しない場合がある。予算上限に達するまで、採択を随時実施する等の工夫によって、採択回数を増やすことが求められる。
  14. 創出されたクレジットを国が買い取る仕組みや、企業の脱炭素に向けた取組みが加速するよう、当該クレジットを企業の算定・報告における排出調整量として活用可能とすることなど。また、クレジットの国際取引市場の形成も期待。
  15. 「日ASEAN相互協力による海外スマートシティ支援策(Smart JAMP)」のような支援策の他地域への拡大や、F/S、実証事業後の事業化に向けた支援拡充など。
  16. 事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出量を合計したもの。国際機関「GHGプロトコルイニシアチブ」によって、現在はスコープ1~3として分類されている(スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出、スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、スコープ3:スコープ1、スコープ2以外の間接排出)。
  17. 他国企業との競合では、情報の早期入手による提案内容の十分な検討が不可欠。
  18. 日本企業の海外現地法人と第三国企業の連携案件では、当該海外現地法人所在国のECAの活用もあり得る。
  19. 予算・採択件数の増加や支援対象の拡大(例えば、①初期技術検証費用の支援、②ODA対象国ではない国についても事業分野を限定せずに対象とするなど)。
  20. わが国の国連通常予算分担率は、世界第三位(2019年~2021年、2022年~2024年)であるものの、国連による調達では34位(2017年)に止まっている。
  21. 案件形成の初期段階から財・サービスの供給者が関与するEME(Early Market Engagement)方式の導入も期待。各国・地域のニーズの把握においてコンサルタントの役割も重要。
  22. 案件の初期段階から施工者が関与するECI(Early Contractor Involvement)方式の具体化を通じた、ODAの効率的な計画・設計、適切な事業予算の確保など。
  23. 例えば、L/AやG/Aの金額に縛られることなく、入札直前に発注者側にて予算の補正をし、かつ、入札後それでも予算超過となった場合を含め予算補正の裏付けとなる速やかな追加の資金援助を日本政府および相手国政府間にて手当できるような制度など。
  24. 無償資金協力は資金を贈与する援助形態であり、その主契約者は日本において設立された法人等に限定。しかし、近年、日本企業の海外ビジネスの現地シフトが加速し、日本企業が主契約者となったうえで、現地の関係会社に再委託するケースが増加。この場合、当該関係会社が主契約者となることができれば、より低廉なコストでホスト国・地域のニーズに沿った支援が可能になる場合もある。こうした観点から、業界によっては、無償資金協力における再委託や調達の現状を把握したうえで、主契約者条件の緩和を期待する声もある。
  25. 例えば、地熱発電案件において、入札参加資格事前審査でEPCコントラクターには厳しい資格要件が求められる。これを事業環境の実態に即して見直すなど。
  26. インフラを導入するフェーズのみならず、運営・維持のフェーズもカバーするなど
  27. 品質向上のための新しい技術やノウハウといった、価格以外の要素を含めて評価する総合評価方式など
  28. 事業調査・実証後の事業化にあたり、ODAが供与されやすくなるような支援、仕組みなど。
  29. 経済安全保障やFOIPの観点で重要な中進国への支援も必要。
  30. 例えば、①発電設備納入後のメンテナンス、②物流インフラ建設後の運用・メンテナンス、③決済システム整備に関する人材育成とO&Mを一気通貫で支援した事例の他国への展開など。
  31. クラウド化の進捗に伴い、費用を一括拠出せず従量課金するサブスクリプション型サービスモデルが増加。構築年度に止まらず、複数年にわたりサービス費用を毎年拠出する仕組みも不可欠。
  32. 莫大な費用が必要でホスト国・地域の規制による影響を受けやすくリスクが大きい一方、収益性が不透明なことも多い。
  33. 「中小企業・SDGsビジネス支援事業」など、柔軟かつ迅速に活用しやすい支援の拡充を含む。
  34. GHG排出権や当該国におけるグリーン水素・アンモニア製造装置の設置およびそこで生産される水素・アンモニアの独占輸入権を円借款の返済原資として認めるなど。
  35. VGF(Viability Gap Funding)円借款(途上国政府が実施するPPPインフラ事業に対し、原則として日本企業が出資する場合、途上国政府による事業の採算補填(VGF)の原資を貸し付けるもの)およびEBF(Equity Back Finance)円借款(本邦企業、および途上国政府・国営企業等が出資をするインフラ整備事業等に対して、途上国側の出資金のバックファイナンスとして円借款を供与するもの)の採用拡充など。
  36. ホスト国政府の都合により支払遅延が起きた際には、ホスト国政府からの支払書類等を待たずにJICAから施工者やコンサルタントなどに対して出金できるようにするなど。また、総事業費を分割する形で円借款契約を毎年締結しなければならない案件では、予算法案の成立遅延等のホスト国政府都合により円借款契約の締結が遅れる年もあり、その場合も日本企業が資金難に陥らないよう、ホスト国政府からの正式な要請を待たずに直接の貸付を実行することを希望。
  37. ホスト国政府との交渉は、力関係において劣勢に立つことの多い民間企業のみでは負担が大きい。
  38. ミャンマーにおけるノンプロジェクト型の無償資金協力案件では、フォースマジュール宣言の承認および追加費用に関する解決の目途が立たず、施工者側が経済的負担を強いられており、追加費用への支援が望まれる。
  39. 施工監理を担当するコンサルタントは施主と契約を締結するため、施主と施工者の間で意見の相違が発生した際、中立的な裁定が下されない恐れがある。コンサルタントはJICAとの契約に変更することなどが考えられる。
  40. JICA民間連携事業部のさらなる組織強化および人員増強、適用国の柔軟化、現地通貨建て融資の実現、プロセスの一層の迅速化など。また、国際開発金融機関(MDBs)などとの協調融資のみならず、JICA単独での投融資供与やリードアレンジャーとしての主体的な審査業務の遂行も期待。途上国およびわが国のスタートアップ支援に資する海外投融資ファンドの創設の検討も考えられる。
  41. 主要国の輸出信用機関(ECA)や地域開発金融機関との協調融資等の制度拡充、現地通貨建て融資の導入・拡大、ハードミニパームローンの提供拡大、固定金利での融資の実施など。
  42. 本邦品1割以上かつ日系品3割以上を要件とする輸出金融のルールについて、日系品3割以上のみを要件とするなど。
  43. 買収した現地海外企業が、海外連結子会社となって支援を受けるケースもある。より円滑なコミュニケーションと案件推進を可能にするため、英語による情報発信が重要。
  44. 完工後、安定操業に入った段階での譲渡制限緩和(当該案件参加日本企業の子会社への譲渡等)が認められれば、投資資金の回収・新規インフラ案件への再活用につながる。
  45. 深刻な水不足が見られる先進国における鉱業用水事業を可能にするなど。
  46. 国ではなく地方時自治体の予算により開発・運営されるプロジェクトも多い。
  47. カントリーリスクが高い国における案件など。
  48. グリーン水素などの未成熟技術分野を含む。
  49. 石炭火力発電への支援も期待。この場合、事業遂行に必要な銀行保証や金利スワップ供与につき市中銀行が取組み不可とするケースもあるため、プロジェクトの実情に即してJBIC融資条件を柔軟に緩和(例えば、融資契約上求められる金利スワップ比率の上限引き下げ・撤廃や、銀行保証の代わりにスポンサーの親会社保証にて代用するなど)していくことも必要。
  50. ①プラント建設工事の中断等による追加費用を対象とする貿易保険の填補事由をコロナ等の感染症を含む非常リスクに拡大、②サプライチェーン強靭化に資するため、本邦企業の直接投資先に加え、再投資等(間接投資)や仲介貿易における前払い取引についても海外投資保険の対象とするなど。
  51. ①仕向国外での設計・機器調達契約(通称オフショア契約)と仕向国における建設工事契約(通称オンショア契約:日本企業の海外子会社等が契約当事者)が別立てになっている場合、オンショア契約において発生した増加費用をオフショア契約の貿易保険にて付保されるようにすること、②海外投資保険における契約違反リスク特約の要件緩和(海外事業資金貸付保険を利用していない場合も認める、財務省・中央銀行以外の政府保証も可とする、優良私企業向けも可とするなど)、③海外事業資金貸付保険における日本裨益の要件緩和など。
  52. 公共性が高く事業休止が容易でない電力事業等において、電力販売契約(PPA)解除による事業不能等の発生以前に、国営企業による義務不履行に起因する減損が発生した場合、当該減損も填補対象とするなど。
  53. サブ・ソブリン案件も含めた積極的な引受。
  54. 海外で保険販売のライセンスを有する元受保険会社を通じて、NEXIの保険商品を代理販売する再保険スキーム(フロンティング)の利便性向上。特に、費用面、検討時間の迅速化、現地での引受に伴う原産地比率の制限に関する改善。
  55. 現状では外銀等への売却・譲渡に制約があるなど、海外ECAに比べて制約が強い。
  56. 両機構による出資は、日本企業の出資があることを基本条件としており、単独出資は一時的である場合(日本企業の将来の投資が見込める場合)に限り例外的に認められているが、経済安全保障の確保やわが国からの輸出の呼び水効果が期待される場合など、国益に資する重要な案件においては条件を緩和することが考えられる。
  57. 提案事業に対して十分な知識を有する担当者が不足しているケースがある。また、競合する民間企業からの出向者が担当者となるケースもあり、信頼関係を醸成しにくい組織構成となっている。

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