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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2024年5月21
一般社団法人 日本経済団体連合会

【賃金引上げ】

〔2024年度春季労使交渉における大手企業の回答・妥結状況の第1回集計結果(5月20日公表)の受け止めと今後の課題を問われ、〕月例賃金の引上げ率が1991年以来の5%超、引上げ額が現行の集計方法に変更した1976年以降で最高を記録したことは非常に心強く、嬉しく思う。

この力強い賃金引上げのモメンタムを来年以降も継続し、「賃金は上がっていくことが当然」ということを社会的規範として醸成することが最も重要である。それは経団連の社会的責務だと思っている。記録的な賃金引上げとなった昨年を起点に、今年は勢いが加速した。来年はぜひ定着させる年としたい。

その鍵を握るのは、中小企業と有期雇用等労働者の賃金引上げである。経団連では、労務費を含めた適正な価格転嫁を進めるべく、「企業行動憲章」の第2条を改定し、「パートナーシップ構築宣言に基づき、サプライチェーン全体の共存共栄を図る」ことを明記するなどの取り組みを進めている。「構造的な賃金引上げ」の実現に向け、来年以降も全力で取り組んでいく。

【定額減税】

〔6月から始まる定額減税の日本経済への影響、および企業の事務処理負担について問われ、〕定額減税によって可処分所得は増加する。企業の賃金引上げと相まって、消費が活性化されることを期待している。

定額減税に係る事務については、以前より国税庁が企業向けQ&Aを公表・周知しており、企業側の準備も進んでいるのではないか。定額減税を給与明細に記載することについては、国民が減税額を把握できるという面で意味があろう。

【長期金利上昇】

〔長期金利の上昇(新発10年物国債の利回りが0.98%と11年ぶりの高水準)の日本企業への影響について問われ、〕政府・日銀は経済に急激な影響が生じないように金融政策の見直しを進めており、企業も多様な資金調達手段を講じていることから、経営への甚大な影響は考えにくい。むしろ、各社において、本来の姿といえる「金利のある世界」で、事業の優先順位付けや新規事業の開発が一層進むといったプラスの効果も期待できる。

【保護主義】

〔米バイデン政権による中国製製品の関税大幅引上げ方針の発表、中国政府による対抗措置等、保護主義が高まる現状の受け止めを問われ、〕基本的には、自由で公正な貿易投資の実現が極めて重要であり、保護主義の高まりは憂うべき事態である。

二国間の貿易紛争について、当事国間で合意に至らない場合はWTO紛争解決手続に則って処理されることが本来の姿であるが、手続きの一部が機能不全に陥っている中、解決が容易ではないのが現状である。引き続き状況を注視していきたい。

【中国による日本の水産施設登録停止】

〔中国の税関当局が、日本の水産施設の登録効力を一斉停止した(5月)したことの受け止めを問われ、〕中国は2023年8月から日本産水産物の輸入を全面禁止しているため、今回の措置による影響は不明である。突然、登録の効力を無効とした理由も含め、中国政府の説明を待ちたい。

ALPS処理水の海洋放出に関しては、日中間で技術的事項に関する専門家同士の対話(2023年3月30日)が行われており、今回の措置がそうした流れに水を差さないことを願っている。

【米大統領選挙】

〔次期米大統領選挙でトランプ前大統領が当選した場合を想定した経済界の対応について問われ、〕大統領選の結果が米国の内外政策に及ぼす影響については諸説あると承知する。仮定の話へのコメントは控えるが、一般論として、企業はビジネスのため、あらゆるケースを想定して備えるものである。州知事との関係も重要である。

【政治資金】

〔自民党の政治資金規正法の改正案(17日国会提出)について問われ、〕重要なことは透明性と実効性の確保である。具体的な内容については各党、様々な考え方があろう。法改正の行く末に国民は注目している。「信なくば立たず」であり、政治において国民の信頼は不可欠である。今通常国会会期内での合意を目指し、与野党で真摯な議論を重ねてほしい。

その上で、大前提として、民主主義の維持にコストがかかることは厳然たる事実である。こうしたことを踏まえ、そもそものコスト負担のあり方についても、与野党で議論を深めてほしい。

【日産自動車】

〔日産自動車が公正取引委員会による下請法違反の勧告後も取引価格の減額を強要しているとの一部報道の受け止め、経団連の対応について問われ、〕パートナーシップ構築宣言に賛同し、各社が真摯に取り組みを進めている。そうした中、報道されているような行いが事実としてなされていたのであれば、誠に遺憾である。事務レベルでの経団連への報告によれば、現在、社内で事態の精査を行っているとのことである。速やかな実態解明、対応を待ちつつ、しかるべく対処されるよう、必要に応じて経団連としても促していきたい。

以上

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