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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年6月21日 No.3090 オックスフォード・エコノミクス ウォーカー会長と懇談

講演するウォーカー会長

経団連ヨーロッパ地域員会(横山進一共同委員長)は13日、東京・大手町の経団連会館で、英国のシンクタンク、オックスフォード・エコノミクスのウォーカー会長との懇談会を開催し、政治情勢を踏まえた欧州債務危機の現状と世界経済に与える影響、今後の対応策等について話を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

深刻な状況にある欧州経済

世界の経済情勢を概観すると、米国は好調で欧州は停滞し、日本はその中間にある。2012年の経済成長率について、米国は2.5%、日本は震災復興需要を含め2%と予想する。しかし、これらの数字は欧州債務危機の影響をすべて反映していない。欧州経済は前例のない危機に直面しており、ギリシャやポルトガル、スペイン、イタリアなどの2012年の経済成長率は、2~7%のマイナスに陥るだろう。

欧州経済の不確実性の高まりにより、問題のある国の国債利回りが急上昇、外国人投資家は国債保有を急速に減らし、銀行預金の引き出しも急増している。そうしたなか、ユーロ離脱の可能性はギリシャ一国にとどまらず、仮にそうなれば制御不能の負のスパイラルに陥り、08年の経済金融危機と同様のリセッション(景気後退)が発生し、米国や日本を含め世界中に伝播するだろう。

欧州債務危機を招来した背景

そもそも欧州諸国間には競争力格差があり、この10年間、競争力に劣る国では若年失業率が上昇するなど困難な状況にあった。他方、競争力のある国には応分の負担をしてきたとの思いもある。また、最近の世界経済に作用する四つの力が欧州債務危機にも影響している。第1の財政緊縮策では、国によって対GDP比10%に及ぶ急激な対策が取られた。第2は債務の増大であり、銀行部門の債務が対GDP比200%に達する国もある。第3は企業部門が債務削減のため、過剰な現金を貯め込んでいる。第4の商品価格の高騰は、インフレ圧力上昇と可処分所得の減少をもたらした。

こうしたなか、いくつかの国の選挙民は財政緊縮策にノーを突き付けた。今回の危機の本質は、経済問題ではなく政治問題と言える。

欧州債務危機の収束に向けて

ユーロ圏全体の政府債務の対GDP比率は低く、欧州はIMFや米国、日本に頼らずとも自ら対応できる。ただし、問題の克服には、政策立案者の強い政治的意思が必要である。ユーロ圏維持のために、欧州中央銀行(ECB)による欧州全体の支援プログラムの実施が期待される。また、ドイツなど北ヨーロッパの豊かな国は現下の危機を過小評価せず、危機を引き起こした国も冷静で合理的な判断をしなければならない。時間的な猶予はもはやない。

【国際経済本部】

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