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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年6月28日 No.3091 第101回ILO総会開催 -谷川日本使用者代表が演説

代表演説を行う谷川日本使用者代表

第101回ILO(国際労働機関)総会がスイス・ジュネーブのILO本部で5月30日から6月14日まで開催され、185の加盟国から4千名を超える参加者があった。経団連は、谷川和生雇用委員会国際労働部会長を代表とする日本使用者代表団を派遣。今回の総会では、「社会的保護の床(注)に関する勧告」が採択されたほか、若年者雇用危機、労働における基本的原則及び権利に関する討議が行われ、結論文書が採択された。また、強制労働条約違反であるとして1999年からミャンマーに課していた技術協力提供や会議参加の制限解除を求める決議を採択した。

谷川部会長は日本使用者代表演説において、ソマビア事務局長が就任後間もなく、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を提唱し、生産的な雇用の重要性を訴えたことに謝意を表した。そのうえで、10月から事務局長に就任するガイ・ライダー氏に対しては、世界の政労使の声に公平に耳を傾けるよう要請した。そして、以下の4点について注意を喚起した。

  1. (1)経済成長には何が必要か、雇用を生み出す源泉はどこかを正確に認識し、その認識を各国の政労使で共有できる体制づくりが必要。生産的雇用を生み出すのは企業部門であるという事実のもと、ILOの活動が展開されるべき。

  2. (2)「社会的保護の床」を作成する一義的責任は政府にある。しかし、それを支える財源は、企業活動によって生み出される雇用、そして雇用される労働者が支払う社会保険料や税金、さらには企業が負担する社会保険料とさまざまな税金によって賄われる。

  3. (3)一時的に公的部門が若年者に雇用機会を提供する取り組みの例が見られる。それも企業活動の結果として徴収できる税金などが財源になっていることが実態で、公的部門の雇用だけでは、過大な税負担を認める状況が続かない限り、長期的な持続性という観点からは疑問が残る。持続的に若年者の労働市場への参加を図るためには、企業活動の活性化による雇用機会の提供が不可欠。

  4. (4)企業活動の活性化の結果である成長の果実をきちんと分配していくためにも、基本的原則と権利が確保されることが重要。この観点から、今次総会で扱われた三つの議題は、それぞれ全く別々なものとしてとらえるのではなく、相互連関があるものととらえ、ILOのなかでも一貫性をもって政策を実行していくことが重要。

ミャンマーのアウン・サン・スーチー氏が特別演説

演説するアウン・サン・スーチー氏(写真提供:ILO)

総会最終日の14日、ミャンマー国民民主連盟のアウン・サン・スーチー党首が特別演説を行い、「政治改革に益する社会と経済の進歩を刺激することによって民主化プロセスを強化するような援助」「雇用創出をもたらす外国直接投資」を呼びかけた。演説の前日には、強制労働条約違反であるとして1999年からミャンマーに課していた技術協力提供や会議参加の制限解除と、来年の総会で強制労働撤廃の進捗状況を点検する決議が採択されている。


なお、総会開催前の5月28日、ILO理事(政府理事28名、使用者側理事14名、労働者側理事14名)による、次期事務局長選挙が行われた。立候補者が9名いたため、過半数獲得者が出るまで6回の投票が行われた。その結果、前ITUC(国際労働組合総連合)事務局長でILO事務局次長のガイ・ライダー氏(英国出身)が30票を獲得して、第10代事務局長に選出された。任期は今年10月から5年間。労働組合出身者がILO事務局長に就任するのは初めて。

(注)「社会的保護の床」とは、貧困、社会的弱者、社会的疎外を防止または除去するための基礎的な社会保障制度を表す

【国際協力本部】

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