1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2013年1月24日 No.3116
  5. 中国の政治経済体制の現状と展望で議論

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年1月24日 No.3116 中国の政治経済体制の現状と展望で議論 -「中国モデル」はあるか
/21世紀政策研究所が第92回シンポジウム開催

21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は12月21日、東京・大手町の経団連会館で第92回シンポジウム「中国の政治経済体制の現在―『中国モデル』はあるか」を開催した。21世紀政策研究所では、5年前から日中双方のエコノミストが参加し中国研究を続けてきており、同シンポジウムは今年度の研究成果を踏まえ、中国の政治経済体制の有効性・持続可能性とその影響について議論することをねらいとしたものである。

まず、渡辺利夫・拓殖大学総長・学長(21世紀政策研究所研究諮問委員)が開会あいさつで、21世紀政策研究所でのこれまでの中国研究の検討状況を総括すると同時に、「この5年間で中国研究のテーマは大きく変化した。最終年度に当たる本年度は、『中国モデル』というべきものが果たして存在するのかどうか、委員の方に自由な立場から議論いただいた」として、今回のシンポジウム開催の背景を紹介した。

続いて、三浦有史・日本総合研究所調査部主任研究員、加茂具樹・慶應義塾大学総合政策学部准教授、杜進・拓殖大学国際学部教授、丸川知雄・東京大学社会科学研究所教授による報告が行われた。

三浦氏は、「中国モデル」をめぐる米国、中国、日本各国での多様な議論を整理したうえで、「成果、制度、支払ったコスト、期間など何に着目するかによって、また、先進国か途上国かなど、どの立場に基準を置くかによって、中国の体制についての多様な評価が生まれる」とその背景を説明した。

加茂氏は、中国の経済発展が政治の多元化と民主化につながる可能性について触れ、「国民の意識は、中国共産党でなければいけないという発想から、共産党でなくてもいいという発想に変化しつつあるのではないか」として、中国共産党の生き残りの難しさを指摘した。

杜氏は、中国経済の成長力の低下は今後避けられず、国家資本主義が限界に来たとして、「土地・労働市場や金融システムに対する国家の支配力を弱めると同時に、責任関係のあいまいな中央・地方間財政制度を改革すべき」と問題提起した。

丸川氏は、中国経済のなかで国有企業のプレゼンスが低下しつつあるとしたうえで、「旺盛な起業など民間経済の活力が高まっており、過当競争やハイリスク・ハイリターン的状況のなかから少数の有力企業が生まれつつある」と指摘した。

また、大橋英夫・専修大学経済学部教授がモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、「大きく拡大した所得格差は、これ以上は拡大しないかもしれないが、情報化と都市化の進展によって人々の格差感がますます強まる可能性が高い」「中国共産党は社会の多様な利益を取り入れる努力をしているが、社会の要求とのギャップは大きく体制不安定化のリスクが高い」「日本は経常収支の赤字化が予想されるなか、所得収支で稼ぐことが重要。その点でも多くの企業が進出している中国を抜きに日本の将来はない」など、多岐にわたる議論が展開された。

◇◇◇

シンポジウムでの議論の詳細は、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】

「2013年1月24日 No.3116」一覧はこちら