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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年2月28日 No.3121 提言「電子書籍の流通と利用の促進に資する『電子出版権』の新設を求める」公表

経団連は19日、提言「電子書籍の流通と利用の促進に資する『電子出版権』の新設を求める」を公表した。電子書籍ビジネスを発展させるうえで課題となっている、インターネット上の違法な電子書籍への有効な手段として「電子出版権」という新しい権利の創設を提言したもの。
提言の概要は次のとおり。

1.基本認識

デジタル化・ネットワーク化の流れのなか、紙媒体であった書籍や雑誌が電子媒体により配信される時代が本格的に到来しつつある。わが国においても、タブレットPC等端末の販売台数が急増しているほか、電子書籍購入のためのストア開設の動きも進むなど、電子書籍普及の素地が整い始めている。

電子書籍ビジネスを今後本格的に飛躍させるためには、端末やストアの充実に加え、魅力あるコンテンツが豊富に供給されることが不可欠であるが、その障害となっているのが、ネット上に流通する違法な電子書籍の問題である。

2.「電子出版権」(仮称)の内容

現行著作権法では、ネット上に流通する違法な電子書籍に対して著作権者である作家個々人で対処することとなっているが、事実上困難である。また、出版者は著作権者との契約により、違法な出版物を差し止める権利(出版権)を与えられているが、この権利は紙媒体のものに限られ、ネット上の違法な電子書籍に対しては与えられていない。

こうした状況を打開するための立法的な解決方法として、著作権法を改正して独占的ライセンシー一般に差止請求権を付与することも望ましい解決策のひとつである。ただしこれは、特許権その他の知的財産権との平仄等について議論が及ぶ可能性があるなど、短期間で実現することが難しい。そこで、現在の深刻な違法電子書籍被害に鑑み、電子書籍を発行する者に違法電子書籍に対抗できる権利「電子出版権」(仮称)を与えることを提言する。

「電子出版権」は、(1)既存の出版者に限定せず、電子書籍を発行するものに与えるため、新規参入を促進する(2)電子書籍を発行する者と著作権者との契約により発生するため、著作権者の意向が尊重される(3)デジタル複製とネット配信に関する権利を持つため、ネット上の違法な電子書籍に対する有効な対策となる(4)電子出版権の第三者への再許諾(サブライセンス)を可能にすることで、流通の円滑化を確保する――ことが期待できる。

なお、一部の出版業界関係者等は「出版者への著作隣接権(注)付与」を提案しているが、同提案は、権利者の意思が最優先されないおそれがあるほか、権利処理の複雑化による流通阻害効果が予想されるなど、副作用が大きい。

3.今後の進め方

経団連は「電子出版権」を含めたさまざまな選択肢について、幅広いステークホルダーによる検討の場を文化庁につくり、早期に議論を開始するよう政府に求めていく。

(注)出版者への著作隣接権=著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている者に与えられる権利。わが国では、実演家、レコード製作者、放送事業者および有線放送事業者にのみ与えられている。出版者に与えられている事例は、国際的にもほとんどない

【産業技術本部】

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