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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年2月28日 No.3121 わが国の格差・貧困問題について論議 -21世紀政策研究所が第95回シンポジウム開催

21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は14日、東京・大手町の経団連会館で第95回シンポジウム「格差問題を超えて~格差感・教育・生活保護を考える」を開催した。

シンポジウムでは、同研究所がこの1年間取り組んできた研究プロジェクト「今後の日本社会の姿~格差を巡る議論も踏まえて」の研究成果を発表するとともに、格差感・教育・貧困対策といった諸課題についてパネルディスカッションを行った。

まず、先の民主党政権において内閣官房参与として社会保障・税一体改革に関わった、峰崎直樹氏が、「格差・貧困問題をどう考えるか」と題して講演。峰崎氏は、わが国はデフレ、少子高齢化、格差・貧困問題、財政危機といった深刻な課題に直面する一方で、企業・家族に依存する日本型福祉国家が行き詰まりを見せているとし、社会保障分野で新政権が真っ先に生活保護費削減方針を示したことを懸念。また、親の所得格差が子どもの教育格差、さらに雇用・所得格差につながるという世代間連鎖をいかに断ち切るかが大きな課題であるが、社会保障・税一体改革では教育問題・雇用問題までカバーできていないと指摘。社会保障・教育分野は新たな需要・雇用創出が期待できるとし、ユニバーサルな社会保障の必要性を強調した。

続いて、鶴光太郎・慶應義塾大学大学院商学研究科教授(21世紀政策研究所研究主幹)が、今回の研究目的や研究成果について報告した。鶴氏は、実証的な分析の結果、わが国では2000年代後半にかけて、(1)再分配後の所得格差は拡大していない(2)高所得者層の所得が拡大するアングロサクソン型の格差拡大も見られない(3)高所得者も低所得者も皆が貧しくなっている――という三つの事実を踏まえたうえで、格差感、大学教育のあり方、貧困対策について掘り下げた分析を行ったことを説明した。

続いて行われたパネルディスカッションでは、鶴氏をモデレーターに、研究会の委員である玉田桂子・福岡大学教授、川口大司・一橋大学准教授、篠崎武久・早稲田大学准教授、さらに峰崎氏、小塩隆士・一橋大学経済研究所教授が加わり、活発な討議が行われた。

篠崎氏からは格差感の背景や政策課題について、川口氏からはわが国の大卒・高卒の賃金格差と教育問題について、玉田氏からは生活保護基準のあり方と最低賃金との関係について報告があった。小塩氏は、(1)長期的な不況のなかで貧困リスクが身近なものになっており、低所得者対策が急務である(2)格差感は個人の社会経済的属性のほか社会の流動性の度合いにも依存する(3)格差感、幸福感を政策的に追求することは難しい――と指摘した。

その後、格差感、大学教育、貧困対策のあり方をめぐって活発な討議が行われた。

シンポジウムでの議論の詳細については、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】

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