経団連は16日、「通商戦略の再構築に関する提言」を公表した。
同提言は、経団連の包括的な通商政策に関する提言としては、2011年4月以来のものとなる。この間、各国による通商ルールづくりの主導権争いの加速、わが国のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加の決断など、通商政策をめぐる国際環境に大きな変化が生じており、これを踏まえつつ、グローバルルールづくりを主導する攻めの通商戦略を提案した。
■ 現状と課題
世界では、TPPや米国とEUのFTA(TTIP)などの「メガFTA」や、有志国のみで交渉を行うサービス貿易新協定など、新たな通商ルールづくりが加速している。他方で、新興国、途上国を中心に保護主義の動きが高まり、既存のルールの遵守の確保にも懸念が生じている。また、バリューチェーンの重要性の増大や、技術進歩による新たなビジネスモデルの登場により、既存の通商ルールでは十分に対応できない状況が拡大している。そうしたなかでわが国は、FTAの遅れにより、わが国を拠点とするグローバルビジネス展開が制約されている。
こうした現状に鑑み、通商戦略においては、(1)わが国を含むグローバル・サプライチェーン、バリューチェーンの円滑化(2)複数の通商ルールが混在する弊害への対処(3)保護主義抑止に向けたWTO体制の維持・強化――を念頭に置くことが必要となる。
■ わが国が推進すべき通商戦略
以上の認識に基づき、わが国が推進すべき戦略は、(1)広域FTA、すなわちTPP、日中韓FTA、RCEP(東アジア包括的経済連携)を道筋とするFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の構築、日EU経済連携協定の推進(2)わが国が目指す貿易・投資ルールの内容を見据えた「統一軸」を形成し、将来の多角的ルール(WTO協定の一部)とすることを視野に、FTA間のルールを調和させること(3)分野別協定、例えばWTOのITA(情報技術協定)の改訂やサービス貿易新協定などにわが国も積極的に取り組み、途上国の関与を促進すること(4)WTO協定の履行監視や紛争解決手続きの活用と、WTOのもとでのルールの改訂・形成への取り組みの継続(5)投資協定、租税条約、社会保障協定の締結によってWTO/FTAのルールを補完すること――である。
■ 通商戦略の体制整備
複数の大型FTA交渉に臨むわが国として、政府一体として交渉に当たるため、「通商担当大臣」「通商戦略本部」「通商政策諮問会議」を置くとともに、これらを支える直属の事務局組織を設けるべきである。
■ グローバル競争を勝ち抜く国内改革の推進
激化する国際競争を勝ち抜くため、国内の立地競争力の強化に向けてグローバルなルールづくりを主導するとともに、農業をはじめ、大胆な規制・制度改革を早急に講じていく必要がある。
【国際経済本部】