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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年5月30日 No.3132 デフレ脱却の条件で説明を聞く -東京大学大学院の渡辺教授から/経済政策委員会

経団連の経済政策委員会(岡本圀衞委員長)は17日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、東京大学大学院経済学研究科の渡辺努教授から「デフレ脱却の条件」をテーマに説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

1.デフレと企業の価格設定行動

わが国では近年、競争の激化などを背景に、メーカーや流通業者がライバル企業の動向を過度に意識し、需要増加や原価上昇が起きても、価格をさほど引き上げないという慎重な姿勢がみられる。各企業にとっては、顧客確保のために価格を据え置くことが最適な行動であるが、マクロ経済全体では、需要増加に見合った適切な価格設定がなされないという「協調の失敗」が生じており、これがわが国のデフレの背景にある。

需給の変化に対する価格の感応度が小さい状態では、財政政策や金融政策による需要増加は物価上昇に結びつきにくい。物価上昇率と需給ギャップの過去の関係を用いた試算によれば、日本銀行が物価安定目標として掲げる消費者物価上昇率2%の2年間での達成には、毎年度実質6.3%の成長率を達成する必要があり、現実的には極めて困難である。デフレ脱却のためには、需要喚起だけでなく、企業の価格設定行動も変えていく必要がある。

2.デフレ脱却に向けた課題

この点、短期間でデフレを脱却した大恐慌期の米国の事例は示唆に富む。米国におけるデフレ脱却のカギは、フランクリン・ルーズベルト大統領が行った政策レジームの転換と、それに伴う人々の予想の変化にあるといわれている。前政権の金本位制、小さな政府という政策レジームと決別し、金本位制の放棄と拡張的な財政政策、さらにはインフレの効能の強調など、一連の政策をパッケージとして打ち出した結果、人々のデフレ予想が払拭され、インフレ予想が定着した。

安倍政権も経済政策をパッケージとして打ち出すことによって、政策レジームの転換を図っており、人々の物価予想がデフレからインフレへ切り替わることが期待される。インフレ予想が定着することとなれば、各企業はライバル企業の動向を過度に意識することなく、需要増加に見合った価格引き上げを行えるようになり、デフレ脱却に向けた環境が整うと考えられる。

3.「東大日次物価指数」の公表

今後は、デフレ脱却に向けて、日々の物価がどのように推移していくかが注目される。

そこで、物価の動向をより正確に把握するために、5月24日から独自開発した消費者物価指数「東大日次物価指数」を東大物価プロジェクトのホームページで公表する(http://www.price.e.u-tokyo.ac.jp/)。これは、全国約300店舗のスーパーから集めたPOSデータを用いた日次の物価指数であり、総務省の消費者物価指数よりも早く物価動向がとらえられるうえ、売れ筋商品の価格動向の把握も正確に行うことができる。

【経済政策本部】

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