Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年7月18日 No.3139  労働法制のあり方テーマに講演聞く -大阪大学大学院法学研究科の小嶌教授から/雇用委員会

経団連は3日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会(篠田和久委員長)を開催し、大阪大学大学院法学研究科の小嶌典明教授から「労働法制のあり方について」をテーマに講演を聞くとともに意見交換を行った。
講演の概要は次のとおり。

冒頭、小嶌教授は労働法制の規制緩和があたかも「諸悪の根源」であるかのように言われる風潮があるが、そこには大きな誤解があり、規制内容を常識に沿ったものに改め、杓子定規な規制の適用をやめる必要があるとの基本的な認識を展開した。

そのうえで、労働者派遣法、労働契約法、高年齢者雇用安定法の改正が現場に支障を来しているとして、それぞれの問題点を指摘した。

労働者派遣法は、2012年10月に改正法が施行され、さまざまな規制強化がなされている。そのなかで、離職後1年以内の派遣受入禁止規定について、自発的に離職した者や雇用期間満了により離職した者まで規制対象とし、就労機会の喪失を招いていることから、規制対象を解雇された者に限定するなどの見直しが必要であるとした。

また、労働契約の申込みみなし規定について、採用の自由や労働契約の合意原則との整合性の点で問題があることから、少なくとも違法派遣に対する別の制裁を検討すべきとした。

さらに、今後の法改正のあり方に言及し、期間制限の基準を「業務」から「ヒト」に改める考え方について、いわゆる26業務の内容を洗い直したうえで、派遣先の通常業務と明確に区別できる業務に限定することが望ましいと述べた。

加えて、期間制限の基準を改めるにあたっては、派遣法および職業安定法を抜本的に見直す必要があるとし、「人の供給」と「役務の提供」は異なるという概念から派遣法を解放すべきと述べた。

労働契約法については、有期労働契約の無期転換ルールに触れ、期間の定めのない従業員の間で職務内容等に違いを設け、異なる昇給制度を採用することは実態としては不可能に近いと指摘したうえで、通算契約期間の法定上限(5年)について、労使の合意がなされた場合は適用除外とすべきであったとの考えを示した。

高年齢者雇用安定法に関しては、継続雇用制度を選択した場合について、法は企業に制度の導入を求めているのであり、個々の従業員の継続雇用を義務付けているわけではないとの見解を示し、就業規則に継続雇用制度を定める場合に、厚生労働省のモデル就業規則のように「満65歳まで継続雇用する」と明記するのではなく、「継続雇用することがある」と規定するなど、運用上の留意点を示した。

【労働政策本部】