経団連は、15日、「企業年金税制に関する重点要望」を公表した。
現在、企業年金は、公的年金を補完しつつ、従業員の退職後の所得確保に大きな役割を担っている。他方、公的年金の給付水準は今後、少子高齢化の進展とともに抑制せざるを得ないなか、自助努力の仕組みとして、企業年金の果たす重要性はますます高まると考えられる。
提言では、「企業年金の安定的な財政運営」ならびに「各企業の実情にあった柔軟な制度設計」を可能とするとともに、新たに企業年金を導入する企業が増える環境整備を図るべく、次のとおり四つの税制上の措置を求めた。
1.企業年金積立金に対する特別法人税の撤廃
企業年金積立金に対する特別法人税は、これまで課税凍結が繰り返されており、2014年3月末に課税凍結期限を迎える。今後仮に課税された場合には、毎年積立金を毀損し、企業年金の安定的な運営に悪影響を与えるため、撤廃すべきである。
2.確定拠出年金にかかる税制改正
(1)拠出限度額の大幅な引き上げ
確定給付企業年金には拠出限度額の制約がない一方、確定拠出年金(以下、DC)には、拠出限度額が存在する。平均的な企業の賃金カーブや退職金水準を考えると、中高年層や役職の高い者の掛金が拠出限度額を超過することがあり、DC中心の退職給付制度設計を難しくしている。拠出限度額を大幅に引き上げ、より柔軟な退職給付制度設計を可能とすべきである。(2)拠出限度額内でのマッチング拠出の完全自由化
現行のマッチング拠出制度では、従業員本人の掛金は事業主掛金を超えてはいけないため、事業主掛金が少額にとどまる場合、従業員の自助努力による積立増の機会が失われている(図表参照)。拠出限度額内でマッチング拠出を完全に自由化し、従業員の老後所得の確保に向けた選択肢を充実すべきである。(3)中途引き出し要件の緩和
DCは、退職した場合であっても、60歳未満での受け取りが厳しく制限されている。従業員側にとっても、退職直後の生活資金や公的年金支給までのつなぎ資産とするなど、退職金に対するニーズは高いため、中途引き出し要件を緩和すべきである。
企業における年金制度 | 拠出限度額 (月額) | マッチング拠出 掛金額(月額)※ |
確定給付型の年金制度を実施していない場合 | 51,000円 | 最大 25,500円 |
確定給付型の年金制度を実施している場合 | 25,500円 | 最大 12,750円 |
※現行のマッチング拠出制度においては、事業主掛金額を加入者の掛金額が超えてはならない。
【経済政策本部】