経団連の観光委員会(大塚陸毅委員長、山口範雄共同委員長)は、観光立国実現の目玉の一つとされているクルーズ観光の振興策についての提言を取りまとめるため、10月30日に東京・大手町の経団連会館で会合を開催、山縣宣彦国土交通省港湾局長から、政府の取り組みについて説明を聞くとともに意見交換を行った。
開会のあいさつで大塚委員長は、「アジア地域ではクルーズ市場が急成長しており、寄港回数も増加している。大型クルーズ船の寄港に伴う経済効果は、1回の寄港で1億円を超えるともいわれており、わが国としてもクルーズ観光振興に向けた戦略的な取り組みが求められる」と指摘した。
■ クルーズ振興通じた観光立国実現に向けて
続いて山縣局長が、「クルーズ振興を通じた観光立国の実現に向けて~雇用・所得の創出への貢献」と題して、政府の取り組みに関する説明を行った。
山縣局長は、2000年に1030万人だった世界のクルーズ人口が10年には2116万人と2倍強に成長、特にアジアでは経済成長とともにクルーズ人口が急増し、20年には500万人に達すると見込まれていることを紹介。近隣諸国では、こうした需要増を受けて新たなクルーズターミナルの整備を行っていること、また、韓国ではクルーズを未来型の新成長産業と位置づけ、関係省庁合同でクルーズ産業活性化対策を策定していることを指摘、「わが国も早い段階から総合的な施策を実施していく必要がある」と述べた。
わが国政府でも、第二次安倍内閣が今年6月にまとめた「日本再興戦略」において、「大型クルーズ船に対する入国審査の迅速化・円滑化、外国クルーズ船社に対応するワンストップ窓口の周知等を進める」ことが明記されるなど、政府全体でクルーズ振興に取り組む動きが始まっている。山縣局長は、(1)大型クルーズ船に対応したターミナルの整備(2)クルーズ振興のためのワンストップ窓口として外国クルーズ船社への情報提供(3)全国の港湾管理者や地方自治体の首長等が参加する「全国クルーズ活性化会議」の活動支援(4)道路案内標識の改善(英語表記の統一や交差点名の表示内容の適正化)(5)ビザ要件の緩和や大型クルーズ船乗客に対する出入国審査の迅速化・円滑化――など、政府における具体的な取り組み状況を紹介した。
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続いて行われた意見交換では、クルーズと航空との連携やクルーズの国内市場のさらなる振興、日本のクルーズ全体のイメージアップに向けた全国の港の連携・対応強化を期待する意見などが出るとともに、20年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた大型クルーズ船に対応可能な埠頭の整備等について質疑応答が行われた。
経団連では今後、会長・副会長会議等での審議を経て、11月中にもクルーズ振興に向けた提言を取りまとめ、公表することとしている。
【産業政策本部】