Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年2月27日 No.3167  提言「海外競合企業による技術情報等の不正取得・使用を抑止するための対策強化を求める」を公表 -技術情報等の保護目的に特化した新法制定など提案

経団連(米倉弘昌会長)は18日、提言「海外競合企業による技術情報等の不正取得・使用を抑止するための対策強化を求める」を公表した。同提言は、熾烈化する国際競争のもと、海外競合企業による技術情報やノウハウ、営業秘密等(以下、技術情報等)が盗用されるおそれが高まっていることを踏まえ、保護対策の強化を求めたもの。

提言ではまず、国境を越えた技術情報等の盗用は国富の損失であり、わが国の産業競争力の低下につながる深刻な問題であることを指摘。わが国では他国に比して、政府の対策や官民連携の枠組みの整備などにおいて、明らかに立ち遅れている。わが国においても、危機感をもって実態の把握と対策の強化を急ぐべきであるという観点から、(1)技術情報等の保護を目的とした新法の制定(2)営業秘密管理指針の改定を通じた運用の改善(3)官民フォーラムの早期創設と実効ある運営――を提案している。具体的な内容は次のとおり。

1.技術情報等の保護を目的とした新法の制定

技術情報等の盗用を受けた企業の迅速な被害回復を実現するとともに、国家としてわが国企業の技術を守るという断固とした姿勢を示すため、以下の問題については、技術情報等の保護に特化した新法を制定し必要な制度整備を行うことにより、解決を図るべきである。

  1. (1)法体系
    わが国の技術情報等の保護については、競争法体系に位置づけられる不正競争防止法(以下、不競法)のなかに規定が設けられている。
    これに対し、海外では、企業の有する技術情報等は競争力に直結する国の財産であるという観点から、これを保護する目的に特化した法律を設けている国も多い。

  2. (2)罰則
    わが国では罰金刑の上限が1千万円であるのに対し、上限なしとする国も多い。また、諸外国と異なり、わが国には国外での使用・開示行為に関する重罰規定も存在しない。

  3. (3)被害企業の負担
    民事訴訟の原則に従い、証拠収集や損害の立証等の責任が被害者側に課されており、訴訟提起の障害となっている。

  4. (4)国際的な事案
    管轄権や準拠法をめぐる争いに多くの時間が割かれることがあり、規定の不備が指摘されている。

2.営業秘密管理指針の改定を通じた運用の改善

不競法において保護の要件とされる「秘密管理性」は、不競法の所管官庁である経済産業省の策定する「営業秘密管理指針」で具体化されているが、これまで非常に厳しい認定がなされてきた。

同指針は、多岐にわたる事項が網羅されているが、それらをいかに実践すれば秘密管理性が認められるかは不明確である。同指針については今後、後述する官民フォーラムで集積される情報等を参考に、秘密管理性を認定されるために企業が最低限なすべき事項を、明確に示すことが必要である。

3.官民フォーラムの早期創設と実効ある運営

現在、経済産業省では、経団連が提案した「官民フォーラム」の設置について検討を進めており、早期の創設が期待される。

同フォーラムを実効あるものとするためには、企業からの被害事例の収集が必須となるが、その際、情報を提供した企業が不利益を被らないよう、完全匿名化や一般事例化等によって厳格な守秘管理を行うべきことが大前提である。また、政府においては、諸外国の取り組みを参考に、企業側への積極的な情報提供を行うとともに、政府トップレベルの理解と支持のもと、警察を含む幅広い政府関係機関が積極的に関与した、ワンストップサービスを実現すべきである。

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提言の全文はホームページ(http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/011.html)参照。

【産業技術本部】