Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年3月20日 No.3170  提言「個人情報保護法の見直しへの意見」を公表 -法改正に向け保護・利活用の適切なバランスを求める

近年、「ビッグデータ時代」といわれるように、ICT技術の急速な発展によって、膨大なデータの収集・分析・利活用が進んでいる。特に、個人に関する情報(パーソナルデータ)の活用促進は、消費者目線に立った新ビジネスや、課題解決型のイノベーションの起爆剤となることが期待される。

しかし、こうしたデータについては、個人情報保護法上の取り扱いルールが不明確で、企業は利用に躊躇する一方、消費者は事業者による情報の取り扱いに不安を感じている。

日本再興戦略を受けて、政府のIT総合戦略本部は昨年12月に「パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針」を決定した。今年6月には制度見直しの「大綱」が決定され、来年の通常国会に個人情報保護法の改正案が提出される見通しである。

そこで、今後の法改正に産業界の考え方を反映させるため、経団連(米倉弘昌会長)は18日、提言「個人情報保護法の見直しへの意見」を公表した。提言の概要は次のとおり。

1.制度見直しの基本的視点

  1. (1)透明性、予見可能性の向上
    事業者が判断に困らないだけの、透明性、予見可能性を具備したルールとすることが必要。

  2. (2)保護と利活用の適切なバランスの確保
    わが国の成長戦略に貢献できるよう、保護と利活用の適切なバランスを確保すべき。

  3. (3)社会的コストの最小化
    重複行政の排除や、ガイドラインの統一化等、事業者の負担増とならないよう配慮することで、社会的コストの最小化を図るべき。

  4. (4)技術革新の変化に対応できる柔軟な制度
    技術革新の速さや社会の急速な変化を踏まえ、変化に対応し適切なタイミングで見直しを図ることが可能な柔軟な制度が望ましい。

  5. (5)国際的な制度の調和化に向けた主体的取り組み
    国際的な議論の喚起、制度の調和化にわが国が主体的に取り組む必要がある。

2.法改正に向けた具体的課題

  1. (1)定義の明確化
    「保護されるべきパーソナルデータの範囲」の明確な定義づけを行うべき。また、「個人が特定される可能性を低減したデータ」(匿名化データ)を第三者提供における同意原則の例外化とすべき。

  2. (2)第三者機関についての考え方
    今回の制度見直しでは、パーソナルデータの保護と利活用をバランスよく推進する観点から、独立した第三者機関を設置することが検討されている。第三者機関には、(1)個人情報の保護一辺倒ではなく、利活用の促進面でも評価される組織とすること(2)事前の権限行使要件を明記すること(3)主務大臣制との二重行政の排除――などが必要となる。そのうえで、立入検査権など、現行法にない新たな権限の行使は、匿名化データを事業者が利用・流通する場合に限定されるべきである。
    そのほか、制度の国際的調和化の促進や、事業者が行おうとするパーソナルデータの利活用方法の適法性の事前確認をタイムリーに行えるような制度の構築が必要である。

3.その他の課題

ガイドラインの機動的な見直しや共通化など、法改正を待たずにできることは直ちに実行すべきである。

【産業技術本部】