経団連は12日、東京・大手町の経団連会館でスポーツ推進委員会企画部会(教育問題委員会スポーツ推進部会を改称。鍛治舍巧部会長)を開催し、スポーツビズ社の田中和弘取締役から、同社が手がけるスポーツマネジメント業務の概要や企業活動との関わり、スポーツが企業にもたらす価値などについて説明を受けるとともに懇談した。
■ スポーツマネジメント事業とは
田中氏はまず、「アスリートを取り巻く環境は大きく変化し、所属団体などが選手の活動を統括する時代から、競技者個人の裁量に任される時代に移った」と説明したうえで、同社の事業内容を紹介。具体的には、「上村愛子選手(モーグルスキー)、太田雄貴選手(フェンシング)をはじめ現役アスリート・スポーツ文化人など約40名をマネジメント。現役アスリートに関しては、コンディショニングやデータ分析、衣食住、マーケティング、財務・法務、引退後のセカンドキャリア形成など、パフォーマンスを最大限に発揮するためのサポートを幅広く行っている」と述べた。
同社は、スポーツマネジメントの経験を活かし、スポーツ関連のイベント企画やマーケティングなど企業向けの事業も展開しているが、2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まってからは、一般企業から「どうやってスポーツ支援に取り組めば良いか」「会社で運動部を持つにはどうするのか」「会社のためにスポーツを効果的に活用する方法はないか」といった問い合わせが寄せられている現状を説明した。
■ スポーツが企業活動にもたらす価値
田中氏は加えて、「経団連によるスポーツ支援の強化は、スポーツ界にとってありがたい話だが、企業がスポーツを支援するだけでなく、スポーツの側も企業に価値をもたらせないか」と提案。その背景には、企業におけるスポーツの意味合いは従来、従業員の士気高揚、広告・宣伝、社会貢献などに限定されていたが、今日では「スポーツ人財」や「スポーツを通じた国際戦略」も企業活動に大きく貢献し得る状況があると述べた。
スポーツ選手の企業人としての資質について田中氏は、「組織行動力、リーダーシップ、精神力を持つ人財(資産)である。ゴールを設定し、そこへ向けて全力で取り組む力が非常に優れている。スポーツ経験者を雇う企業は、彼らをスポーツ専門と位置づけることをせず、そのなかからビジネスエリート候補を発掘し、育ててほしい。昨今、グローバル人財の確保が急務といわれるが、グローバルな経験を持ち、人間力にも優れたスポーツ人財は多い。外部に頼らずとも、社内のスポーツ経験者に研修・経験を積ませることで、グローバル人財を育てることはできる」と説明した。
さらに、「海外ビジネスの営業活動としても、スポーツに投資する価値は大きい」と強調した。サッカーのJリーグがアジアとの交流を積極的に行い、成果をあげていることを例として、「スポーツ外交による関係強化は、ビジネスにも好影響をもたらす。ODA(政府開発援助)のように、企業でもCSDA(Company Sports Development Assistance)といった考え方が広まることを期待する」と締めくくった。
【社会広報本部】