経団連のウクライナ部会(岡素之部会長)は3月26日、東京・大手町の経団連会館で、外務省欧州局の丸山則夫参事官ならびに経済産業省通商政策局の信谷和重欧州課長兼ロシア・中央アジア・コーカサス室長から最近のウクライナ情勢と今後の展望等について説明を聞くとともに、意見交換を行った。
冒頭、岡部会長は、昨年10月にキエフで行われた第5回日本ウクライナ経済合同会議の成果に触れ、二国間経済関係の拡大に向けた機運の高まりを感じたなかで、今回の混乱が発生したことから、事態の平和的かつ迅速な解決に期待を表明した。
続いて丸山氏および信谷氏から、ウクライナ情勢について説明が行われた。概要は次のとおり。
■ 刻々と変化するウクライナ情勢
ウクライナは、地政学的特徴から、東部と西部で住民の主使用言語が異なるなど多様性を有し、これまでEUとロシアの両にらみの政策を取ってきた。しかしながら、昨年11月にEUとの連合協定への署名を延期したことに端を発した混乱により、政権は崩壊。その後、最高会議が承認した暫定政権のもとで大統領選挙による政権樹立に向けた手続きが進行するなかで、ロシアがクリミアに介入した。ロシアは欧米の制裁にもかかわらず、住民投票によるクリミア自治共和国の独立を承認し、さらに同国をロシアに編入した。今後は、5月25日のウクライナ大統領選挙に向けて予断を許さない状況が続く。
■ G7は問題の解決に向けて結束
今回のロシアの行動は、国際法や国連憲章はもちろん、ウクライナ・ロシア間の各種条約にも違反しており、G7は危機感を抱いている。3月24日のG7首脳会合ではウクライナ支援、ソチG8サミットを含むロシアへの対応を議論し、ハーグ宣言を取りまとめた。
その概要は、ウクライナを支持し、IMF主導による国際社会の金融支援の重要性を強調。また、ロシアを非難しクリミア併合を承認せず、ソチG8サミットへの不参加を表明し、今後のロシアの対応いかんでは制裁強化も辞さないというものである。他方、ロシアが欧州安全保障協力機構(OSCE)の対ウクライナ特別監視団派遣を支持したことを評価し、状況を緩和させる外交的な道筋は開かれていると明示している。わが国は、世界銀行との協調融資による円借款、日本貿易保険の引受枠の設定等、最大1500億円のウクライナ支援を実施する。
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意見交換では、経団連側から現在ウクライナやロシアで進行中の各種プロジェクトへの影響についてたずねたところ、今後のウクライナ情勢や各国の対応も注視しつつ、適切な対応を取ることとしており、現時点で日本の政府系金融機関等による支援に変更はないとした。また、貿易保険の柔軟な運用の要望については、引き続き検討するとした。
最後に、岡部会長から、事業の推進や撤退などの最終判断は各企業が行うものの、その際の材料となる最新情報の収集と提供、状況を見据えた前広な発信を求めたところ、適切に対応したいとの発言があった。
【国際経済本部】