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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年4月10日 No.3173 社会貢献担当者懇談会を開催 -社会貢献の活動評価事例で説明を聞く

左から龍治氏、工藤氏、友田氏

経団連は3月26日、東京・大手町の経団連会館で、社会貢献担当者懇談会(小川理子座長)を開催した。会合では、育て上げネットの工藤啓理事長、ビズデザインの友田景取締役、日本マイクロソフトの龍治玲奈渉外・社会貢献課長から、社会的投資収益(SROI)の手法を用いた社会貢献の活動評価について、日本マイクロソフトによる被災者の就労支援の事例をもとに説明を受けるとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 被災者の就労支援事業の概要=工藤氏

育て上げネットでは、これまで日本マイクロソフトとともに、若年無業者へのITスキル講習と就業支援を行っていた。この経験を活かし、東北で活動していたNPOと連携して、被災者に類似の活動を行った。その結果、今回の講座修了者で求職活動を行った人のうち、目標を上回る45%が就労できた。

そこで、単なる就労実績だけではなく、生活の質の向上、技術の習得、社会的つながりの獲得といった社会的変化を含めて、この事業の効果を定量的に可視化するため、SROIの手法を用いることにした。

■ 社会的投資収益(SROI)の具体的手法と事業の評価=友田氏

SROIはアメリカで開発された事業評価の測定手法で、主にイギリスで活用されている。SROIでは、事業によって生じた変化のなかから具体的結果につながったもの(アウトカム)を抽出し、さらにそのなかで経済的および社会的価値が確認されるものを「インパクト」としてとらえる。このインパクトを貨幣価値換算して、かかったコストと比較することで投資収益率を算出する。

算出の結果、同事業の効果は8200万円で、投資額に対して4.84倍の効果が得られたことがわかった。

このようにSROIを活用することで、関係者に対する事業の説明責任を果たせるだけではなく、効果をみながらより有用なものへ事業の改善につなげることができる。

例えば今回、講座参加者に対して行ったアンケートでは、自身の変化として「孤立の解消」を挙げた回答者が最も多かったが、貨幣価値に換算してみると「事務作業の効率化」の効果が最も大きかった。そこで今後は、「孤立の解消」を増やすだけでなく、事業全体の貨幣価値をより高める方向で改善の議論が行える。

■ 事業効果の可視化の重要性=龍治氏

社会貢献事業へは、多くのステイクホルダーが関係しているので、特に数字をもって説明責任を果たすことが重要と考えている。

就労に至るまでのわかりづらい小さな変化、例えば「前向きな気持ちになった」という被災者の姿も、データをもって説明することで、支援の効果をより可視化することにつながると考える。しかし、数字のみに偏りすぎず、一人ひとりのストーリーも伝え、両面から成果を発信したい。

今回、単なる評価測定にとどまらず、分析と考察に基づく提言もいただいた。この提言が次のプロジェクトにおいて、何をすべきか見極めることに役立った。

SROIは、まだ日本ではそれほど普及していない。今後も皆さまと勉強しながら、支援の輪を広げていきたい。

【政治社会本部】

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