経団連は2日、東京・大手町の経団連会館で運輸委員会(宮原耕治委員長、瀬戸薫共同委員長)を開催した。成城大学社会イノベーション学部の杉山武彦教授から、2013年6月に閣議決定された総合物流施策大綱(以下、大綱)の評価と今後の物流政策のあり方について説明を聞くとともに、意見交換を行った。また、提言「貿易の円滑化に向けた輸出入制度の一層の改善を求める」と「わが国航空貨物のセキュリティ対策に関する意見」の審議を行い、提言が承認された。講演の概要は次のとおり。
■ 今次大綱の評価
今次大綱の政策目標については、従来の「効率化」「グリーン化」「安全・安心の確保」に加え、東日本大震災の教訓を踏まえ「物流における災害対策」が追加された。また、経団連提言「次期物流施策大綱に望む」(13年4月)を受け、今後の物流施策が目指すべき方向性として「全体最適な物流の実現」が掲げられ、(1)荷主、物流事業者、行政、国民各層の連携・協働(2)産業政策や経済政策全般との整合性――を目指すこととされた。今次大綱では責任部署や目標の達成時期が明示されたことは評価されるものの、経団連から要望のあった大綱の施策の方向性や優先順位の明確化については、踏み込み不足となっている。
■ 物流をめぐる今後の展望
震災後、日本企業の新興国への海外展開の目的は、生産コストの低減から市場の獲得へと進化しており、新たな業種や中堅・中小企業の海外進出が加速することで従来とは異なる物流ニーズが発生する余地は大きい。また、アジア等の各種インフラ整備の必要性の高まりを受け、環境・エネルギーや水、交通をはじめ複合的なインフラ・システムの輸出が実現すれば、関連する中小企業の進出が一層進展することとなり、それに伴う物流機能の需要も発生する。こうした動きに対し、国内空洞化を懸念する声もあるが、日本企業の海外進出は日本の経済の成長に不可欠であり、国内での生産活動が国際分業体制に適切に位置づけられることが重要である。
■ 今後の物流政策のあり方
物流の普遍的な課題とは、高度化する荷主のニーズに応えるため、輸送や荷役など物流活動を構成する個々の機能の向上あるいは機能の組み合わせの工夫により、全体としての物流を効率化・合理化することにほかならない。そのための具体的手法としては、(1)個々の荷主あるいは物流企業による省力化・機械化(2)物流拠点の集約・分散(3)情報化(4)メイク・オア・バイの選択に加え、(5)サプライチェーン全体による共同化・標準化(6)インフラ整備――に整理できる。
産業政策の推進と物流体制の改善・強化は表裏一体であり、物流は基本的に産業を支えるものとして機能している。したがって、物流政策も個別企業の取り組みと産業動向を踏まえたかたちで実施されることを原則とすることで、「より高度な最適化」の達成を目指すべきである。
【産業政策本部】