21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は3月28日、第106回シンポジウム「COP20、21に向けた戦略を考える」を会員企業、有識者、政府関係者、メディア関係者等、283名の参加を得て開催した。
同研究所ではかねて、澤昭裕研究主幹を中心に地球温暖化対策の国際枠組みにおける自主的削減行動計画のあり方を検討し、ボトムアップ方式等の対応策を独自に提言してきた。こうしたなか、COP20(今年12月)とCOP21(2015年冬)では、新たな国際枠組みの策定交渉がヤマ場を迎えることから、産業界としても戦略的な対応が必要とされている。
■ 来賓あいさつ
会合の冒頭、あいさつに立った牧原秀樹環境大臣政務官は、(1)COP19では全交渉参加国による削減目標の自主的設定を日本政府が主張し合意された。COP20では、各国の取り組み状況の報告・検証プロセス導入を目指す(2)低炭素社会実現と気候変動への危機感醸成を目的として、「Fun to Share」キャンペーン(日本の技術や知見の国際展開)を立ち上げ、日本がリーダーシップを発揮する(3)日本企業のビジネスチャンス拡大を視野に、二国間クレジット(JCM)を中核的ツールとする環境外交を外務・経済産業・環境の3省が一致団結して推進する――との方針を示した。
■ 講演
次に、環境安全委員会国際環境戦略ワーキンググループの手塚宏之座長が、産業界の取り組みを説明。(1)産業界はすでに経団連自主行動計画による温室効果ガス削減目標を達成し、当初の目標を大幅に上回る実績を上げている。2020年まで経団連・低炭素社会実行計画を実行する(2)京都議定書の枠組みでカバーされない米国、中国等については、ボトムアップ型の目標設定と義務化のレベルを注視すべき(3)日本は、優れた省エネ・環境技術の普及により地球規模での削減に貢献すべきでJCMへの期待は大きい――との考えを述べた。
■ パネルディスカッション
続いて行われたパネルディスカッションでは、外務省の南博国際協力局審議官、経済産業省の三田紀之大臣官房審議官、環境省の新田晃地球環境局国際連携課国際地球温暖化対策室長が参加し、澤研究主幹がモデレーターを務めた。南氏は、新枠組みの決定にあたっては、国連気候変動サミット(今年9月)と各国による約束草案提示(15年第1四半期)が重要と述べた。
また議論のなかで、JCMについても検討がなされ、市場メカニズム導入に反対する国があり国連交渉下での正式な認知はすぐには困難との指摘があった。これに対し、JCMは技術移転による国際貢献の「見える化」のツールでありビジネス推進の観点からも重要であるとして、引き続き国際認知の実現に努めるとの意見も出された。
三田氏は、経団連の低炭素社会実行計画についてその実行過程で環境政策の中核に位置付けられるレベルにまで質的充実が図られることを期待すると述べた。また、新田氏は、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の進行状況とともに、同報告を受け日本政府として気候変動への統合的な適応計画を15年夏までに作成すると説明。また、民生・家庭部門における政策対応として家電製品等を対象とする「エコ診断」や持続可能で環境に配慮した「環境不動産」について説明があった。
このほか国内目標では、米国、EUの動向を見極めたうえでの数値目標設定、基準年の変更、エネルギー効率の指標化等の必要性とともに、業界ごとの検討が政府側から求められた。
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今回の議論を通じ、気候変動交渉に対する考え方が政府、産業界の間で収斂しつつあることが確認された。一方、JCMの取り扱い等課題も浮き彫りになった。21世紀政策研究所では約束草案に産業界として盛り込むべき内容を検討し、提言していくこととしている。
【21世紀政策研究所】