経団連は5月23日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会競争法部会(川田順一部会長)を開催し、ジョーンズ・デイ法律事務所の宮川裕光弁護士から、公正取引委員会(公取委)の審査手続の適正化に向けた課題について説明を受けるとともに、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。
1.審査における適正手続確保の重要性
2005年の独占禁止法改正以降、リニエンシー制度(注)の導入をはじめとして、公取委による執行力は格段に強化されており、このこととのバランスを確保するため、適正手続の確保は重要である。
また、国際事件の摘発において公取委と欧米の競争当局との連携が強化され、国際的執行が活発化するなか、わが国においても国際水準の適正手続を確保する必要性は高い。さらに、グローバル競争が激化するなか、わが国で適正手続が確保されないまま法執行が続けば、日本企業が外国企業と平等に競争できないという弊害が生じることも考えられる。
適正手続の確保は、決して実態解明と対立するものではない。実際に欧米において適正手続が確保された公正な手続のもとで法執行が行われていることは、法執行に対する信頼性の向上やコンプライアンスの促進につながっており、実態解明に役立っていると評価されている。企業側、公取委双方のために、適正手続の確保は重要である。
(注)リニエンシー制度(課徴金減免制度)=公正取引委員会の調査に協力すれば、課徴金が免除または減額される制度
2.具体的な課題
具体的には、立入検査および事情聴取に弁護士が立ち会い、企業側がしっかりとアドバイスを受けられるようにすべきである。弁護士の立ち会いは、当局側に支障を与えるものではなく、むしろ、供述調書の任意性や手続の公正さの確保につながり、効率的な実態解明に資するものである。
また、法的助言を得る目的でなされた弁護士と依頼者との間の通信を保護する、弁護士依頼者秘匿特権を導入すべきである。本来秘匿特権で保護されるべき文書をひとたび公取委に押収されてしまうと、秘匿性を放棄したものとみなされ、海外の手続において保護を主張できず日本企業が不当な不利益を受けるおそれがある。
さらに、公取委の保有証拠の開示を今以上に認めるべきである。立入検査時の提出資料については、事実関係を早期に把握し、リニエンシー申請等の防御体制を検討するため、立入検査の段階での謄写を権利として認めるべきである。供述調書についても、公取委と対等に防御するため、写しの交付が認められるべきである。意見聴取手続における証拠開示については、13年独禁法改正では企業側に有利な証拠については開示対象となっておらず、今後の課題である。
【経済基盤本部】