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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年7月10日 No.3184 「少子高齢化・人口減少が日本社会にもたらすインパクト」 -国立社会保障・人口問題研究所の森田所長から聞く/経済政策委員会企画部会

経団連の経済政策委員会企画部会(橋本法知部会長)は2日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、国立社会保障・人口問題研究所の森田朗所長から「少子高齢化・人口減少が日本社会にもたらすインパクト」をテーマに説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 人口動態の展望

わが国の総人口は2010年の1億2806万人をピークに減り始めている。今後減少のペースは加速し、2100年には4000万人台まで低下するであろう。人口構成も、1960年は「ピラミッド型」であったが、少子高齢化により2010年には「釣鐘型」となった。これが2030年には「逆ピラミッド型」に変わっていく。総人口に占める老年人口(65歳以上の人口)割合は、2040年から2060年ごろに約40%まで上昇すると見込まれる。

■ 全国レベルでの影響

こうした人口動態が続いていくと、将来的には生産年齢人口(15~64歳の人口)1人が、従属人口(年少人口+老年人口)1人を支えていく社会となる。そこで、少子化対策の重要性が強調されるようになり、今年6月に閣議決定された「骨太の方針」や「日本再興戦略」でも、人口問題への対応が大きく取り上げられた。

現在の日本の人口置換水準(人口を一定に保つための出生率)は2.07といわれる(2012年は1.41)。将来的に総人口が1億人を下回らないようにするためには、遅くとも2032年までに人口置換水準を達成する必要があるが近年、短期間でここまでの大幅な出生率の改善をみた先進国は存在しない。仮に今、出生率が大幅に回復したとしても、出産適齢期の女性の数はしばらく減り続けるため、当面の総人口の回復は容易ではない。

スウェーデンやオランダといった出生率回復に成功した諸外国は、ありとあらゆる出産・保育政策を総動員し、20年程度かけてようやく成果が出ている。少子化対策への特効薬は存在しない。

そこで、移民を受け入れるという考えもあるが、これは政治的に難しい課題である。移民を受け入れるとしても、定住に向けた生活基盤の構築や将来の社会保障の問題など、さまざまな課題がある。まずは既存の労働力、すなわち女性や60歳以上の高齢者を活用することを検討すべきである。

社会保障給付費も右肩上がりで増えている。特に医療費の伸びが著しく、今後健康寿命をどう延ばしていくかが課題となる。増え続ける給付費を賄う財源としては、消費税の増税分のほか、マイナンバーを活用した高齢者の資産への課税など、世代内扶助の仕組みを検討することも一案である。

■ 地域レベルでの影響

今後、多くの地方自治体で人口が激減する。現在、65歳以上人口が4割以上を占める自治体はわずかだが、2040年には太平洋ベルト地帯を除く大部分の地域に広がる。こうした地域では、出産適齢期の女性の都市部への流出が続き、自治体の存続自体が危機に瀕する。

人口減少下においては、少子化対策のみならず、地方のあり方も考えねばならない。東京一極集中に歯止めをかけつつ、地方自治体のダウンサイジングを進め、自立しうる規模の地方拠点都市の形成を図ることが重要だ。

都市部でも、これから急速に高齢者の割合が増えていく。不足することが見込まれる医療・福祉施設の適切な配置など、将来を展望した抜本的な対策を今すぐにでも講じていくべきである。

【経済政策本部】

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