Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年7月17日 No.3185  「イノベーション創出に向けた研究開発法人の機能強化に関する提言」を公表 -研究開発法人の機能強化へ具体的方策を提示

経団連は15日、「イノベーション創出に向けた研究開発法人の機能強化に関する提言」を公表した。同提言は、わが国のナショナル・イノベーション・システム改革の一環として研究開発法人の機能強化に向けた具体的方策を示したもの。

経団連では今年3月に欧州(ドイツ・ベルギー・フランス)を訪問し、研究開発法人の取り組みなど、欧州における産学官連携の最新動向を調査した。政府での最新の取り組みやそれら調査結果も踏まえ、今回の提言を取りまとめた。提言のポイントは次のとおり。

1.ナショナル・イノベーション・システムの改革

民間企業、大学、研究開発法人それぞれにおいてイノベーション創出に向けた取り組みが不可欠となっているなか、わが国では、省庁縦割りの影響が強いこともあり、明確なナショナル・イノベーション・システムが存在しない。これらイノベーション創出を担う各セクターが、産業競争力強化に向けて最大限の力を発揮できるよう国家としてのグランドデザインを描く必要がある。そのうえで、システム全体における個々の法人の役割の明確化とそれに応じた改革を行うことが重要である。あわせて、現在政府が創設準備を進めている「特定国立研究開発法人」について、産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所(理研)をその先行モデルとして成功させることが求められる。

2.産学官連携強化につながる仕組みの導入

ナショナル・イノベーション・システム改革には、産学官連携の抜本的な強化が不可欠であり、そのための具体的な仕組みの導入が必要である。主なものとして、(1)産業界との連携に応じて予算が配分される制度を導入すること(2)研究人材の流動化を促進するため、クロスアポイントメント制度(注1)等の本格的な導入を図ること(3)企業等で活躍できる博士人材を育成するため、大学教授が研究開発法人の研究者を兼務できる「二重役職制」を有効活用すること――などがあげられる。それら仕組みの導入とあわせ、研究開発法人のトップには、産業界との連携強化に向けた強いリーダーシップの発揮を期待する。

3.研究開発法人に関する新たな取り組み

ベンチャー支援を行うことやクラスター(注2)の中心になることなど、研究開発法人が新たな役割を担うことも求められる。また、研究開発法人の評価においては、研究や技術の内容で専門的な評価が求められることから、特に「特定国立研究開発法人」については、総合科学技術・イノベーション会議が直接関与できる制度設計にすべきである。

(注1)クロスアポイントメント制度=研究者が複数機関で兼務し、双方から業務内容・勤務割合・時間等に応じて給与を受ける仕組み

(注2)クラスター=特定分野における関連企業、専門性の高い供給業者、サービス提供者、関連業界に属する企業、関連機関(大学、規格団体、業界団体等)が地理的に集中し、競争しつつ同時に協力している状態

※全文は http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/067.html 参照

【産業技術本部】