Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年7月31日 No.3187  「若年者雇用」および「日本再興戦略の改訂を踏まえた雇用対策」をテーマに講演聞く -雇用委員会

経団連は16日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会(篠田和久委員長)を開催した。当日は、東京大学社会科学研究所の玄田有史教授から、若年者雇用をめぐる現状と課題について、厚生労働省大臣官房の小林洋司総務課長から、「日本再興戦略」の改訂を踏まえた雇用対策について、それぞれ講演を聞いた。当日の説明の概要は次のとおり。

1.若年者雇用をめぐる現状と課題(玄田教授講演)

講演する玄田教授

■ 若者が家庭を持ち、少子化に歯止めをかける

少子化を食い止めるには、若者が家庭を持ち、子どもを生み育てることが必要だが、2000年以降、結婚しない孤立無業者が増えている。また長時間労働が女性の出産意欲を阻んでいる。若者の就労支援強化とともに、有給休暇の取得促進や総労働時間の抑制等を通じて長時間労働に歯止めをかけなければ、少子化対策の実効性は高まらない。

■ 若年非正規雇用の正社員化の促進

非正社員から正社員に転換できた要因を統計的に分析すると、(1)医療・福祉分野、高学歴者等、専門性が高いこと(2)非正規雇用として同一企業で2~5年程度継続的に就業経験があること――が明らかになった。特に、採用する側にとって本人の潜在能力や定着可能性の判断材料になり、本人が仕事の達成感を体験する点からも、3年程度の継続した就業経験が必要である。先の通常国会で廃案になったが、労働者派遣法改正案は、非正規雇用の3年程度の就業機会の拡大につながるものであり、一定の評価をしている。

■ 若者の採用・定着の推進

人手不足が深刻になるなかでは、労働者の定着を促すことが重要である。非正社員と正社員との間で仕事内容に明確な差がないにもかかわらず、賃金格差がある場合、非正社員の納得度は低くなり、就業継続を阻害する。雇用形態にかかわらず、若年労働者の定着促進に向けて、事業主には職務内容・責任や労働条件の明確化を一層徹底していくことが求められる。

■ 本当に手を差し伸べるべき若者

職探しに消極的な無業の若者には、1990年代初頭は家庭環境が比較的裕福な者が多かったが、90年代後半以降、低所得世帯に属する者が増えている。彼らにとって就業した場合に期待できる賃金が低下しており、就業を断念してしまう傾向がみられる。「貧困の再生産」を脱するためには、貧困世帯の若者にも十分な教育機会を提供することが欠かせない。

■ 成人前の子どもに対する取り組み

何よりも若者を支援する人材を育成・確保することが重要である。また少子化の影響もあり、親の保護が得てして過剰になりがちななか、地域の人々を巻き込み、子どものころからさまざまな立場の人々とコミュニケーションを取る機会を増やしていく必要がある。

2.「日本再興戦略」の改訂を踏まえた雇用対策(小林課長講演)

■ 「日本再興戦略」改訂2014

今年6月に「『日本再興戦略』改訂2014」が閣議決定された。雇用労働関係では、外部労働市場の活性化による失業なき労働移動の実現を図るため、ジョブ・カードの抜本的見直し、能力評価制度全体の見直し、キャリア・コンサルティングの体制整備などが取り上げられた。

また、全員参加型社会の実現に向けて、女性、若者、高齢者、外国人材等の活用推進を掲げている。このうち、若年者雇用対策については、与党から今春に提言が示されたこともあり、法的整備が必要なものについては、次期通常国会への法案提出を目指す。外国人材の活用については、高度外国人材受け入れ環境の整備、対象職種や実習期間をはじめとする外国人技能実習制度の抜本的な見直しなどに取り組む。

さらに、労働力人口の中長期的減少や雇用失業情勢が改善するなか、今後、人手不足問題の深刻化が懸念されている。介護、保育、看護、建設に加え、飲食、卸売などサービス産業を中心に「雇用の質」の改善を図り、人材確保につなげるよう対策を検討していく。

【労働政策本部】