経団連は18日、東京・大手町の経団連会館で海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。河野真理子・早稲田大学法学学術院教授を招き、排他的経済水域(EEZ)等の管理法制に関する課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。河野教授は政府の総合海洋政策本部の参与会議(座長=宮原耕治経団連副会長)の委員を務めている。説明の概要は次のとおり。
■ 排他的経済水域の制度
1982年に開催された第3次国連海洋法会議で、国連海洋法条約が採択された。同条約は、領海、排他的経済水域、大陸棚、公海、深海底に海域を区分するなど、海を三次元的にとらえ、沿岸国の権利を定めたことが特徴である。排他的経済水域の幅は200カイリ(約370キロメートル)であり、沿岸国は、同水域、海底およびその下の天然資源の探査や開発などに関する主権的権利を有する。
■ 総合海洋政策本部参与会議の作業
政府の第2期海洋基本計画(2013年4月)では、排他的経済水域等の開発を促進するため、海域管理に関する方針を策定し、包括的な法体系を整備すると明記された。そこで、参与会議の下の「EEZ等の海域管理のあり方プロジェクトチーム」(主査=河野教授)は今年3月に報告書をまとめた。参与会議としては、海洋産業振興や海洋調査・情報の一元化・公開のあり方も含めた意見書を5月に山本一太海洋政策担当大臣に提出した。
■ 法制度に関する課題
同報告書では、日本の排他的経済水域の特徴として、(1)世界第6位の面積(447万平方キロメートル)と広大であること(2)領海には主権が及ぶのに対し排他的経済水域には主権的権利が及ぶこと(3)従来の漁業や航行での利用者に加えて、海洋開発の新規参入者がいること――などを指摘している。
また海域管理に必要な視点として、第一に、排他的経済水域等の特性に適した管理や、新たな利用者の事業活動に資する法制度の整備がある。第二に、国際的な観点では、国連海洋法条約の規則に従うことや、海洋環境の保全に関する国際基準への配慮などがある。
管理法制の目的は、排他的経済水域等の開発と海洋産業の振興を図るため、持続的な方法で効果的に排他的経済水域等を管理することである。
ただし、海域利用者間の利害を調整する手続きや、衡平な漁業補償のあり方については結論が出なかった。
法制度の整備に向けた今後の課題として、(1)国による排他的経済水域等の管理体制(2)漁業者と新規参入者の利害調整における透明性の確保(3)利害の特定方法――などが挙げられる。
【産業技術本部】