経団連は7月28日、東京・大手町の経団連会館で日豪経済連携協定(EPA)の合意内容に関する懇談会を開催し、首席交渉官、共同議長としてそれぞれ豪州との交渉にあたった長嶺安政外務審議官、中山泰則経済産業省大臣官房審議官(当時)から協定の個別具体的内容などについて説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。
■ 日豪EPA交渉をめぐる経緯と合意の背景
2007年4月に始まった日豪EPA交渉は、足かけ7年・16回の正式交渉会合と政治レベル・実務レベルでの多くの折衝を経て、今年4月に大筋合意し、安倍総理がキャンベラを訪問した7月8日に署名式が行われた。交渉が合意に至った大きな背景には、わが国ではEPA推進がアベノミクス第三の矢である成長戦略の核心とされたこと、豪州では昨年の政権交代で就任したアボット首相が他国とのEPA交渉加速化のため現実的な対応に舵を切り、日豪双方で交渉を前進させようという気運が高まったことがあった。
■ 日豪EPAの意義と成果
日豪EPAは両国の経済関係のみならず、全般的な関係の緊密化に大きく資する。豪州は、これまでわが国が締結した二国間EPAの相手として最大の貿易相手国であり、その意味で経済的意義の極めて大きなEPAといえる。また、貿易に加え、原産地規則、投資、知的財産、政府調達等、幅広い分野を含む包括的な協定であり、ルールづくりにおいても高い水準の規律を確保している。
日本から豪州市場へのアクセスに関しては、協定発効後8年目に豪州への輸出額の約99.8%(現行約33.9%)が無税化される。特に、鉱工業品分野では大部分の品目が即時に関税撤廃され、日本が強く求めていた自動車関税についても、主力の1500cc超3000cc以下のガソリン車を含む完成車輸出額の約75%が即時撤廃されることになった。
他方、豪州から日本市場へのアクセスについては、豪州からの輸入額の約93.7%(現行約91.7%)が無税化される。農産品に関し、コメは関税撤廃等の対象から除外したが、牛肉については現行38.5%の関税率を、冷凍品については18年かけて19.5%に、冷蔵品については15年かけて23.5%にそれぞれ削減する。ただし、輸入量が一定量を超えると関税率を元に戻す、セーフガードをあわせて導入した。
ルール分野では、原産地規則において、いわゆる第三者証明に加えて産品の輸入者、輸出者または生産者のいずれかが作成した書類の提出も可能としたほか、投資について、豪州が導入反対の姿勢を示していた投資家対国家の紛争解決手続について再協議を行うことを規定するとともに、外資の投資審査基準額を緩和した。また、食料、エネルギー・鉱物資源の安定的供給を確保すべく、特定の品目について輸出を制限する措置を導入しないとの努力義務を規定している。
政府は、日豪EPAをできる限り早期に発効させるよう努力していく。
【国際経済本部】