経団連は7月23日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(下村節宏委員長)の2014年度総会を開催し、13年度の活動や収支決算、14年度の活動計画や収支予算の報告、役員の改選の承認が行われた。続いて、山川宏・京都大学生存圏研究所宇宙圏航行システム工学分野教授から、今後の宇宙政策の課題について説明を聞いた。山川教授は内閣府の宇宙政策委員会の委員を務めている。講演の概要は次のとおり。
■ 宇宙基本計画の概要
2008年8月の宇宙基本法の制定により、総理大臣を本部長とする宇宙開発戦略本部が設置された。さらに、12年7月に内閣府宇宙戦略室と宇宙政策委員会が設置された。現在の宇宙政策担当大臣は、山本一太内閣府特命担当大臣である。14年度の宇宙関係予算は全府省で3827億円である。
昨年1月に策定された宇宙基本計画(5カ年)では、安全保障・防災、産業振興、宇宙科学等のフロンティアが三つの重点項目、測位衛星、リモートセンシング(観測)衛星、通信・放送衛星、宇宙輸送が四つの社会インフラと位置づけられた。
■ 今後の宇宙開発利用の進め方
宇宙輸送システムについては、昨年5月に宇宙政策委員会宇宙輸送システム部会(部会長=山川教授)が新型基幹ロケットの開発を決定したが、今後、その開発を着実に進める必要がある。また、昨年9月に小型のイプシロンロケットの打ち上げが成功した。
測位分野では、準天頂衛星初号機の後継機を整備し、まず18年度に4機体制が実現される予定である。その後、22年度には7機体制とすべきと考えており、今後わが国としての測位衛星システムを整備していく必要がある。
通信・放送分野では、内閣情報調査室のデータ中継衛星事業と、文部科学省と総務省の光データ中継衛星事業を連携して進めるべきである。
リモートセンシング分野では、データの持続的確保などのため、地球観測に資する衛星を継続的に開発して打ち上げるべきである。
国際宇宙ステーション(ISS)については、15年までに有人の特徴を生かした具体的な成果を出す工夫をし、20年までにHTV(宇宙ステーション補給機)の機能向上を検討する必要がある。文部科学省の委員会は、24年までISSに参加する方向で検討すべきという見解をまとめたが、早期に態度を表明すべきではないと考えている。
安全保障分野では、海洋監視や宇宙状況監視に取り組み、情報収集衛星の開発を推進すべきであり、日米協力が不可欠である。
■ 今後の宇宙政策委員会の活動
直近の動きとしては、宇宙政策委員会の下に基本政策部会が新設され、第一回会合を7月18日に開催したところである。宇宙開発利用および基盤整備に関する中長期ビジョンや、安全保障政策と連携した宇宙政策のあり方などが検討課題となっており、8月中に中間取りまとめを行い、秋に最終取りまとめに向けた審議を行う予定である。
<意見交換>
講演後の意見交換では、大宮英明副委員長が「衛星の中長期計画とロケットの長期計画ができれば、産業界は人員や投資の長期計画が立てやすくなる」と発言したところ、山川教授は「中長期ビジョンは産業界にとって投資の見通しが得られるものにしたい」と答えた。
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総会終了後、懇親会が開催され、宇宙開発利用推進委員会のメンバー、若宮健嗣防衛大臣政務官をはじめ国会議員、政府関係者、有識者など約160名が参加した。
【産業技術本部】