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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年8月28日 No.3189 「超高齢・人口減少社会のインフラをデザインする」 -21世紀政策研究所第108回シンポジウム

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は7月24日、都内で第108回シンポジウム「超高齢・人口減少社会のインフラをデザインする」を開催した。

経済成長と需要増を前提につくられてきたインフラは、大量に更新期を迎える。同研究所では、高齢化・人口減少などの環境変化と財政逼迫という現状を踏まえ、研究プロジェクト「超高齢・人口減少社会における公共施設(ハコモノ・インフラ)の維持・更新」を立ち上げ、インフラ再編時の課題整理を進めてきた。

■ 問題提起と独・米の課題

シンポジウムではまず、同プロジェクトの研究主幹である辻琢也・一橋大学大学院法学研究科教授が、30年後には地方都市を中心に急激な人口減少と低人口密度化に見舞われ、1人当たり行政コストが増大するとされるなか、今後のインフラのあり方のヒントを示したいと問題提起した。

次に神尾文彦・野村総合研究所社会システムコンサルティング部長は、人口減少が著しい旧東ドイツの諸都市の取り組みとして、住宅を減築する一方、公園整備、学校や高齢者住宅の改築などでまちの価値の向上に成功した事例や、住民にインフラ維持コストの一部負担を求める事例を紹介した。

また、木村俊介・一橋大学大学院法学研究科教授が、米国の自治体で上下水道・道路等、分野横断的にインフラ管理システムを導入し、住民サービスの向上のみならず、故障箇所の早期発見など予防・先見的な管理を行っている事例を紹介した。

■ 四首長を交えたパネルディスカッション

パネルディスカッションでは、古川康・佐賀県知事、田上富久・長崎市長、日沖靖・いなべ市長(三重県)、森本靖順・天川村長(奈良県)をパネリストに、また栗田卓也・国土交通省大臣官房審議官、原邦彰・総務省自治財政局財務調査課長をゲストコメンテーターに迎え、辻研究主幹の進行のもと、自治体の具体的な取り組みをもとに活発な討議が行われた。

古川知事は、refurbish(磨き直す)とshare(共有する)をインフラ管理のキーワードに、空き家を高齢者・子ども等の地域福祉拠点にコストをかけず改造した例や、農業用ため池を大雨時の貯留池として分野横断的に活用している例を紹介した。

田上市長は、財政制約から今後15年で公共施設の床面積25%相当を削減する計画を策定する一方、小中学校5校を小中一貫校1校に統合することで地域住民の一体感が醸成された例を挙げ、単に削るのではなく、インフラ再編がまちの姿を、また住民の意識をプラスに変え得る点を強調した。

日沖市長は、旧4町合併で誕生したいなべ市が過剰な設備を統合・集約する代わりに高機能化し住民サービスの品質を維持する取り組みを紹介。周辺自治体との共同利用など、広域での取り組みを強化すると述べた。

森本村長は、人口消滅のおそれもある過疎集落では公営の水道事業を断念し、過疎対策事業債を活用して地域住民自ら簡易な水道施設を設置している事例を紹介し、地域住民の自主自立の大切さを強調した。

こうした取り組みの紹介を受け、栗田審議官は、インフラ再編にはまちづくりの観点が重要であり、自治体の先駆的な取り組みが国の枠組みを変えていくと述べた。

原課長は、総務省では地方公共団体に対して公共施設の資産状況を把握して管理計画を策定し、公開するよう求めており、再編時には民間の知恵と資金も活用したいと述べた。

シンポジウムの詳細は、21世紀政策研究所新書として刊行する予定。

【21世紀政策研究所】

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